中国一の起業家ジャックマーを育てた北京有数のビジネススクール、長江商学院のルポの第3回は、学院の二人の教授に、中国およびアジアの最先端のビジネスモデルについて語っていただこう。
そして、長江商学院を卒業してキャリアアップした日本人OBが、アジアでMBAを取る意味について明かしてくれた。
長江商学院の4つの柱

――まず長江商学院の教授として、この学校で人々が学ぶメリットというのは何とお考えになりますか。
李海涛 私はMBA担当の副学院長を務めています。うちの学生は非常に若くて、平均年齢は29歳です。その内40%は外国人か海外経験を持つ中国人。中国でのビジネスに絞った世界クラスのMBAを目指しています。学生にとりまして四つの大きなメリット、四つの柱があります。
一つ目はわれわれの教授陣の豊富な経験です。この学院の先生は45名で、ほとんどの教授は米国あるいはイギリスのトップレベルのビジネススクールを卒業してPh.D.を持っており、欧米の大学やビジネススクールで教授等、講義をした経験のある人間ばかりです。
学生はまずうちで経済・金融・マネジメント関連の世界最先端の知識や経験を知ることができます。アメリカのコロンビア大学と交換留学制度をつくっている のですが、コロンビア大学から戻ってきた学生が口を揃えて言うのは、うちの教授のレベルはコロンビアのレベルだということです。
二つ目の柱は、チャイナインサイトです。中国のビジネスにフォーカスを絞ったノウハウが学べるということです。われわれの教授陣の多くは、中国人で中国で 育って米国で勉強して帰国した人たちですから、そもそも中国に詳しく、帰国した後も中国の経済に非常に強い関心を持っており、われわれの研究センターには 300以上の中国関係の成功のケースがあります。欧米のいかなるMBA講座もこれは提供できません。こういうところにわれわれの強みがあります。
三つ目は、強力なOBネットワークです。2002年にわが校が産声を上げてからこんにちまで十数年経っておりますけれども、OB会のパワーがど んどん強化されています。ビジネスリーダー、フロントランナー、ビジネス界の成功者のうちの多くは、うちのOBの方です。
四つ目の柱は、グローバルラーニングプラットフォームというものです。長江商学院は北京を中心に学べる場所がいくつもあります。中国では北京・上海・深圳、グローバルではロンドン・ニューヨーク・香港です。先ほどのコロンビアの例のように、うちの学生は海外のトップレベルのビジネススクールに学びに行く機会に恵まれています。そして皆さん、非常に起業精神が旺盛ですので濃厚な起業の雰囲気が常時学生を包んでいます」
ジャック・マーは長江で何を学んだのか?
――北京の中でも、北京大学や清華大学にもビジネススクールがありますが、長江商学院がこのような大きな成功を占めている、その最大のポイントは何でしょうか。
李 「北京大学や清華大学は国立大学ですから、学校内に共産党の書記がいたりするなど、ガバナンス的に大きな違いがあります。われわれにはイノベーティブな精神があり、違うことをやれ、というのがわれわれのエッセンスです。長江は産声を上げた最初の日から、今までにない形のビジネススクールをつくろうで はないかということで走ってきました。
学内で最もパワフルな人間は党書記ではなく、教授なのです。私個人を例に申し上げますと、エール大学のPh.D.、その後コーネル大学の教授職を得ておりました。もし他の国立大学でしたら、帰国をしてもその環境がおそらく私の自由な学術を阻むと考えたことでしょう」
――ジャック・マーさんは長江で何を学んだのか。
李 「中国においては多くの新しいビジネスモデルは、実は現場の中から生まれてきたわけです。最も端的な例は、アリババのジャック・マーさんです。まさに実践の中で多くの困難にぶつかり、打開するために様々なイノベーションをして現在のタオバオネット(淘宝網)などを成功裏に導いたわけです。現場からの叩き上げの形のビジネスモデルが存在するということがわかるかと思います。
ただし、システマティックに出来上がってきたものをどう理解し、どう消化し、どう評価したらいいのかに関しては、やはり知的なリソースの動員 がどうしても不可欠になってくるわけであります。たとえばジャック・マーさん御自身も非常にこういったことで迷ったことがありました。
それで、彼は長江商学院に来たんだと思います。ジャック・マーさんはストラテジーを教える教授の授業を聴いて感銘し、その教授を長江商学院からスカウトして、自分のチーフ戦略官にまでしたのです。この点から見ても、彼は決して自分が構築したビジネスモデルに100%の自信を持ったわけではなくて、やはり戦略的な指導が必要であったということがよくわかるかと思います。
われわれ教授も、欧米先進国から進行中の様々な進んだビジネスモデルを中国に持ってきております。中国に後発優位を発揮してもらい、いち早く最新のものを導入できるように指導できるのです」
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