# インフラ投資

公共投資「10兆円」は妥当か?補正予算をめぐる官僚と政府の攻防

これまでの経緯を振り返る

ケンカも辞さない構え

年内にまとめる2019年度補正予算の協議が白熱している。

自民党の世耕弘成参院幹事長は11月22日の会見で、補正予算において、国による財政支出を「真水」で10兆円、事業費は20兆円規模が必要であることを強調した。補正予算が10兆円超になったのは、リーマンショック対応や東日本大震災の復興など、過去4回だけである。

そして世耕氏は、「インフラや学校用パソコン普及のために必要なら特例国債(赤字国債)を発行すべき」との見解も示した。国債の発行は毎年のように起こる議論でもあるが、水面下ではどのような「落とし所」を模索していたのか。

 

自民、公明両党の幹事長・国会対策委員長は11月20日、真水ベースで10兆円の補正予算を政府に求めることで一致している。その伏線は同月13日、自民党の二階俊博幹事長が旗振り役となっている「国土強靱化」を推進する党所属議員と経済界との会合にあった。

二階俊博自由民主党幹事長(Photo by gettyimages)

二階氏は、公共事業費の増大を警戒する財務省に対して「財務省に政治をやってもらっているんじゃない。ケンカしなきゃいかんところはケンカする」と牽制。予算確保に強い決意を示した。国土強靭化といえば、運輸大臣を歴任した二階氏の肝入りだが、所轄の国土交通省は財務省に恭順の意を示していた。

この状況が一変したのは、さらに遡ること11月7日。みんなの党・渡辺喜美議員の参議院財政金融委員会での質疑だった。

渡辺議員は党首時代の影響力はもうないが、政策には依然としてめっぽう強く、20年ほど前に「政策新人類」といわれた面影が今でもある。

この参議院財政金融委員会で渡辺議員は、麻生(太郎)財務相に「今のマイナス金利環境を活用し、ゼロ金利まで国債を無制限発行したらどうか」と迫った。麻生大臣は、「意見として聞いておく」とお茶を濁したが、実際は反論する余地がなかった。

その他にも渡辺議員は、国交省に対し公共事業の採択基準とその妥当性に関する議題(費用便益分析)を指摘した。すると国交省は「15年ほど見直していないが、学識経験者で議論する」と言わざるを得なかった。

 

この費用便益分析に関する議論は、かつて本コラムでも触れたが、日本の金利状況では公共投資が過小評価されている状態が続いているという意味だ。まともに見直せば、採択可能な公共事業は今の3倍以上になり、ここ数年6兆円程度で推移してきた建設国債が、20兆円以上も発行できることを意味する。

ちなみに、野党の一部では最近はやりのMMT(現代貨幣理論)がもてはやされている。端的に言えば「国の借金は返さなくてもよい」と考える理論で、今回の費用便益分析の議論と結びつける向きもあるが、実際に関連性は見出せない。

災害続きだった今年、公共投資増の明快な指針ができ、補正予算での勢いがついた格好になった。渡辺議員と安倍首相は旧知の仲であり、裏で安倍首相が動いているかもしれないという憶測を呼び、「10兆円真水」へ弾みがついている。

もちろん財務省は、何かしらの対抗策を講じるだろう。とりあえず補正予算の成立を、今の臨時国会から年明けの通常国会冒頭へ先延ばしして時間を稼ぐようだが、果たしてどうなるか。

『週刊現代』2019年12月7・14日号より

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