日韓首脳会談「中身ゼロの45分間」と、韓国外交の深刻な機能不全

文在寅政権内の激しい路線対立が…
牧野 愛博 プロフィール

実際、米国国務省のビーガン北朝鮮政策特別代表が12月、韓国を訪れた際、北朝鮮に対する制裁緩和を国連で訴えた中国やロシアへの対応を協議した。韓国外交省は米国と協調する姿勢を明確に示したが、韓国大統領府の態度は煮え切らないものだったという。案の定、中国の習近平国家主席は12月23日、北京で会談した文在寅大統領にこの提案への支持を訴えたという。

金鉉宗氏と崔ジョンゴン氏との葛藤については「噂の類いも多い」(韓国政府元高官)と言われているが、外交を実質的に取り仕切ってきた金氏の影響力が低下しているのは、間違いのない事実のようだ。

 

米朝会談「仕掛け人」の地位低下

次に、金鉉宗氏と崔ジョンゴン氏の対立を裁いて、国家安保室を十分に機能させる責任がある鄭義溶(チョン・ウィヨン)国家安保室長のパワーの低落ぶりも著しい。

鄭氏は2018年前半、平壌やワシントンを飛び回り、南北首脳会談や米朝首脳会談の実現に大きな役割を果たした。しかし、米朝協議が行き詰まると、「金正恩朝鮮労働党委員長は必ず核を放棄する」と言って、トランプ米大統領に米朝首脳会談開催を持ちかけた鄭氏への不信感が米政府内に浮上。鄭氏の地位は低下していった。

日韓関係筋の一人は、最近の鄭氏について「彼の最近の発言は、ほとんど青瓦台(韓国大統領府)の左派の人々と同じ。鄭氏を『レフティー』と呼ぶ人までいる。外交安保分野の統括者としての独自性が全くない」と語る。このため鄭氏は、金鉉宗氏をかばいきれず、国家安保室の独自性はますますなくなるだろう、という観測が浮上している。

また、他の文在寅大統領の側近で、国家安保室の機能を補完する人もいない。

日本政府は一時、駐中国大使を務めた盧英敏(ノ・ヨンミン)大統領秘書室長に期待をかけていた。2015年の日韓慰安婦合意を実現させたのが、当時の谷内正太郎国家安全保障局長と李丙琪(イ・ビョンギ)大統領秘書室長だったからだ。国家安全保障局長に就任した北村滋氏と盧氏との間でルートを作ってはどうか、という声も首相官邸内にはあったという。