日韓首脳会談「中身ゼロの45分間」と、韓国外交の深刻な機能不全

文在寅政権内の激しい路線対立が…
牧野 愛博 プロフィール

日本政府関係者の1人は、安倍首相の指示の意図について「うまくいけば、徴用工問題解決の糸口になるかもしれない。ダメならダメでしょうがない。そういう気持ちがあった」と解説する。実際、首相官邸は外務省などに、文喜相法案についてコメントしないよう指示を出していた。

文喜相法案は、日本企業からの損害賠償の受け取りを禁じて基金による給付を強制するものではない。ただ、元徴用工や遺族らの間で、基金からの受け取りが大きな流れになれば、文在寅政権が徴用工判決問題を解決する環境が整うのではないか、という期待感があったという。

また、日韓GSOMIAの暫定合意によって、文在寅政権が日韓関係改善に向けて努力するのではないかという期待感もわずかにあった。

 

文大統領の意欲は十分だったが…

では、12月24日の首脳会談で、文在寅大統領はどのような行動を取ったのだろうか。

一言で要約すれば、「頭ではわかっているが、体がついていかない」という状況だった。文氏が日韓関係を何とかしたいという意欲は、十二分に伝わってきた。

記者団に公開される冒頭発言が3分にもわたったことはその一例だし、会談のなかでも、「令和という新しい時代の幕開けをお慶び申し上げる」「安倍首相の在任期間が歴代最長になったことについてもお祝いしたい」と、会談の雰囲気を壊さないよう隅々まで気を配っていたという。

その一方、日本側が期待した文喜相法案への言及はなかった。文在寅政権として徴用工判決問題をどう解決していくのかについては、「皆で知恵を出し合って、原告も被告も皆が満足できる解決策を考えよう」と言うばかりだった。

「韓国政府の責任で問題を解決してほしい」という安倍首相の申し入れに対し、文大統領は「行政が司法の判断に介入できない」という従来の立場も崩さなかった。わずかに成果らしい成果と言えば、「外交チャンネルなどの対話の機会を増やそう」ということだけだった。

どうして、こんな結果になったのか。複数の日韓関係筋によれば、第1に韓国大統領府の外交政策についての機能不全が深刻化している事情がある。