これが一番「痛い死に方、苦しい死に方」医師は本当の事は言いません

死ぬのはやっぱりつらかった…
週刊現代 プロフィール

水に溺れるような苦しみ

 対照的に、痛みが徐々に増して長期間継続する病気の代表格は、がんだ。在宅診療での緩和ケアを専門とする在宅ホスピスとちの木所長の渡辺邦彦医師はこう話す。

「脳卒中や心臓病などは、激しい痛みを伴いながら亡くなっていくことは稀で、死の瞬間には痛みを感じてはいないでしょう。ですが、痛みを抱えたまま死ぬ病気ということで考えると、がんは『一番痛く、苦しい死に方』だと言えるのです」

 

 実際、がん患者約1200人にとったアンケートでは、9割以上の人が「痛みがある」と回答している。「緩和ケア」の技術や痛み止め薬の進歩により、病気の痛みを抑えることが以前より容易くなってはいるが、現実はまだ、がんの痛みに苦しみながら亡くなっていく人がほとんどなのだという。渡辺医師が続ける。

「痛みを取るために使われるモルヒネの使用量は、先進国の中でも日本は非常に少ないのです。欧米と比較すると10分の1程度。これは、医者の知識と経験不足が原因です。緩和ケア病棟へ入院しているがん患者さんでも、必ずしも痛みから解放されているとは限りません。がんの痛みは薬でコントロールできるのですが、日に日に強くなっていくため、それに合わせて薬の量もこまめに調節していかないと追いつかないのです」

 前述した心筋梗塞などと違って、がんの痛みは、モルヒネなどを使わなければ、痛みの強さは増していく一方なのだ。

 とは言っても、同じがんでもできる場所によって痛みが軽いものもあれば、重いものもあり、痛み方も違ってくる。痛みが軽いものには、「沈黙の臓器」と呼ばれる肝臓のがんや、腎臓がんがある。他には、肺がんだ。

「肺の中には神経が少ないので痛みは出ず、肺がんが進行して出る症状は長引く咳や血痰などです。肺の痛みは胸膜に炎症が起こることで発生しますが、これは、相当がんが進行した場合でないと起こらないのです」(北海道大学大学院医学研究科特任准教授・西原広史医師)

 しかし、肺がんが進行して胸膜炎が起こると、その苦しみは尋常ではない。まず呼吸が苦しくなってくる。これは、炎症が起こることで胸水という水が肺の中に徐々に溜まっていくからである。それと同時に酸素を取り込める量は減っていき、息を吸っても吸っても、肺が酸素で満たされることはない。水に溺れてもがき苦しむ状態を想像してほしい。肺がんの末期では、この状態が死ぬまで毎日続くのである。痛みはないが、この上なく「苦しい死」を迎えることになる。

「末期になると、苦しくて寝返りも打てずしゃべることも難しくなります。ただ静かに歯を食いしばって、苦しみに耐えるのですが、体もクタクタになってしまうので、モノに当たったりすることもできない。精神的に参ってしまう患者さんも多いのです」(さくら総合病院・小林奈々医師)