京都人の本音と外面
鴨川納涼床は真夏に行くもんやおへん

四条大橋から望む鴨川納涼床。床の下は禊川が。土手には恋人たちが等間隔で並ぶ。暑っ!

 夏の京都の風物詩、鴨川の土手に沿って等間隔に肩を寄せ合うカップルの列。そんな恋人たちを見下ろすように6月1日鴨川の「本床」が始まった。"また蒸し暑い夏が始まるのやなあ"と覚悟しながら、京都人は"気分も衣替え"する。

 ところが近頃は桜が終わる頃になると床を組む工事が始まり、5月には鴨川の西岸あたりに明かりが灯り始めるから、なんとなく気ぜわしい。

 真夏以外の5月と9月は昼も営業する床。昼間は心地よかった風が夕暮れになると薄ら寒いこともしばしばだ。もちろん雨が降ることだってある。雨の日には床はクローズされ、屋内の座敷席が用意される。

「床やないのやから割引してほしいわ!」というクレームもよく聞く。数年前、東京の仲良し3人組一行がとある老舗を予約。食事をしていたら突然の夕立。一行は折敷ごと料理を抱えて一目散に座敷へ退散。

「鱧の落としが運ばれてきたばかり。料理をかばうあまり転んでさ、高級料理が台無し」と、その友人はブーたれていた。しかし、祇園で長年クラブを営むママによると、「夕立やなんて風流やおへんか。束の間の京の雨宿り、むしろ自然のハプニングを楽しまはったらええのに」と昨今、床遊びする資格がない人が多すぎると嘆く。

 ある夏、床の予約を頼まれていた東京の常連さんから電話。「天気予報だと1日中雨らしいからキャンセルして!」とのお願い。「ほんま粋やおへん。雨降りそうやからキャンセルするなんてルール違反どす」

鴨川リバーサイドも変貌

 先だって、久しぶりに四条大橋の交番横からゆっくり三条へ通り抜けてみた。先斗町へ足を踏み入れるや、なんだかピントはずれの戸惑いワールド。香ばしい蒲焼の臭いがしてきたかと思えば、甘酸っぱいようなスパイスの香りに、はたまたオイリーなニンニクの香りと“臭いの万博"や。

 もともと先斗町といえば祇園に並ぶ花街、お茶屋や置屋が軒を連ね、格子から漏れる明かりは大人の世界。昔はこの路地を通り抜ける時はちょっと緊張したものだ。

「床といえば京の旦那衆が接待する処。一見さんお断りの老舗がようけあった」と大正生まれ大叔母が呟けば、祖母も負けじと

「床に連れて行ってもらう時は姉妹もみんな普段よりハイカラでおしゃれな洋服を着せられたもんどす」と返す。鴨川の床といえば先斗町から木屋町、東側にある建物だけがもつ特権。高級な和のイメージが強かった。ところが、学生時代から長年京都に暮らす不動産屋川村さんは「最近、先斗町では横文字の看板もよう見かけるよ」と。アジアン料理からイタリアンそれにバーなど、なんでもあり。

"一見さんお断り"の看板が消え、敷居が低くなって、「大人の品格もなくなり客層もすっかり様変わり。東京資本も多いのとちゃう?」と古い京都人は嘆く。

「ここだけの内緒の話、どこも京都製は箱〔外観〕だけです」と不動産屋川村さん。

「有名な庭園は新興宗教団体に、伝統の町家は東京人に買い取られ、室町あたりでは中国人が全面投資している会社もあるそうやし、京の都が水面下でどんどんよそモンに侵食されていく気分やわ」と危惧する都雀も。そんなことは“知らぬが仏"、夏の床は圧倒的に非京都人の予約が急増するそう。(このご時勢、京の旦那衆が舞妓はべらせての贅沢夕涼みなんて夢のまた夢というこっちゃ)

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