赤ちゃんの五感はお腹の中でも発達している

赤ちゃんの五感は生まれてから発達するわけではなく、お母さんのお腹の中で発達しています。触覚は五感の中で最も早く発達します。

皮膚の感覚を受ける受容体は口の周りから妊娠7-8週頃に出現し、20週頃には全身に広がり生まれる頃には完成しています(#8) 。

五感の中で最も発達が遅いのは、物を見る「視覚」です。赤ちゃんの視力は生まれて1ヶ月は0.03~0.05しかありません。生後6ヶ月で0.1程度、3歳で1.0以上の視力を獲得します(#9)。生まれてすぐはほとんど見えてないのですね。聴覚は視力よりも早く発達し、内耳は妊娠20〜23週に完成し神経としては妊娠40週に完成します。

赤ちゃん用のおもちゃも新生児期は視覚よりも音に反応している。photo/iStock

聴覚が視覚より発達が早いのは、お母さんの声などお腹の外から色んな音刺激があるためと言われています。生後の3日までの赤ちゃんを対象とし様々な母親の声をランダムに聞かせた実験で、自分の母親の声を聞かせた時はおっぱいを吸う間隔が有意に短くなりました(#10)。お腹の中で聞き慣れたお母さんの声を覚えているんですね。

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 未熟児を見せ物にした犯人の真実

れは余談的なエピソードですが、19世紀末〜20世紀初頭の万国博覧会で未熟児を出し物として展示した米国の興行師がいました。

名前をマーティン・クーニーと言います。当然倫理的な問題でメディアや医学界からは最悪な評価でした。

しかし、当時の米国では虚弱な人間を生かすことは悪い種を残すとされ、今では考えられないほど優生思想が当たり前でした。残念ながら未熟児もその対象で、多くの医療者に見捨てられていたのです。当時病院で認可されていなかった新生児保育器に入れて見せ物にしたクーニーの本来の目的は、病院に見捨てられた未熟児を救うことでした。

今は未熟児は、NICUなどでケアされるが昔は苦労も多かったという。photo/iStock

実際にクーニーによって命が救われた未熟児は6,500から7,000人と言われています(#11)。クーニーの正体は実は医師で、今では新生児学の第一人者と言われています。いつの時代も赤ちゃんの為に命をかけた人がいたという話に、新生児科医として胸が熱くなる話です。

いかがでしたでしょうか?赤ちゃんは神秘的な存在で、まだ紹介しきれないトリビアが満載です。しかしこれらのトリビアを知ると赤ちゃんがより愛おしくなりませんか? 子供の成長はあっという間で、赤ちゃんの時期はすぐに過ぎてしまいます。こんな可愛くて神秘的な存在である赤ちゃん、社会みんなで守っていきたいものです。

#1. Sarkar S, et al. Seminars in Fetal and Neonatal Medicine 2008;13:248-255
#2. Field T. Annals of Child Development 1995;10:1‐26.
#3. Cochrane Database Syst Rev 2015;12:CD006275
#4. 日本新生児看護学会.NICUに入院している新生児の痛みのケアガイドライン2020年(改訂) 2020
#5. Gustafsson E, et al. Nat Commun 2013;4:1698
#6. Karlberg P. J Pediatr 1960; 56:585
#7. 光周知足. 腸内細菌叢の分類と生態(東京) 1986.p51
#8. Adams AM, et al. Fetal and neonatal physiology 4th ed Philadelphia Elsevier 2011; 1870-74
#9. 佐藤和夫.with NEO 2020; 33: 51-60
#10. DeCasper AJ, et al. Science 1980; 208 (4448): 1174-76.
#11. To Heaven by Subway (Fortune Classics 1938)
https://fortune.com/2011/05/29/to-heaven-by-subway-fortune-classics-1938/
(2022年6月17日最終閲覧)