八王子女子中2いじめ自殺事件 父親が語る「娘が受けたSNSでの集団リンチ」

少女が残した遺書を公開する

ノンフィクションライター・高木瑞穂氏とフリー映像作家・我妻憲一郎氏主幹のYouTubeチャンネル『日影のこえ』は、大手マスメディアが報じることがない「重大事件のその後」を追い続け、事件の関係者たちの「名もなき声」を記録に残している。彼らが上梓した最新刊『日影のこえ メディアが伝えない重大事件のもう一つの真実』(鉄人社)が話題だ。

同書では「中野劇団員殺人事件」や「京都アニメーション放火事件」をはじめ9つの事件が深堀りされているが、そのなかから「八王子中2女子いじめ自殺事件」の内容を紹介する。なお、文中で使用される「僕」は高木氏と『日影のこえ』取材班の総称である。

13歳がどれほど追い詰められたのか

その下り快速電車は新宿、吉祥寺を過ぎてJR西八王子駅に向かっていた。2018年8月28日16時23分過ぎ、先頭車両がホームに差しかかる。このまま減速、停車して乗客たちの乗り降りを促すアナウンスが流れる、はずだった。

だが、電車は急停車する。周囲に響いた「ギギギギッ」と金属が激しく擦れ合う、誰もが耳を塞ぎたくなるようなノイズが事の重大さをより増幅させる。直後、車掌のアナウンスが流れた。

「ただいま人身事故が発生しました」

ホームから線路内へ飛び込み自殺を図ったのは永石陽菜(当時13歳)、中学2年生の少女だった。

わずか13歳で命を絶った永石陽菜さんわずか13歳で命を絶った永石陽菜さん
 

陽菜の友人(19歳)は、この日を忘れもしない。

「たまたまバイトの帰りで、車でお母さんが迎えに来て、車に乗ったとき陽菜ちゃんが飛び込み自殺で亡くなったって聞いて。正直、半分嘘だと思っていて、状況がつかめなくて」

2歳年下の陽菜とは、何らかの理由で学校に行くことができない者たちが集うボランティア団体で知り合った。不登校の末に流れ着いたという、同じ悩みを共有しあえるからなのか、2人はすぐに打ち解けた。実は彼女も当時、自殺を考えていた。だが、いざ駅のホームに立つと、悲しむ両親の顔が思い浮かんで踏みとどまり、今がある。もちろん、時間を巻き戻すことなどできはしない。ただ後悔だけが残っている。

「状況を知っているからこそ、無理やりにでも陽菜ちゃんのそのバリアを破って、少しずつでもいいから心を開いてもらって話を聞いてあげて、逃げ道を作ってあげたかった。気づいてあげられなくてごめんなさい」

何があったのか。どれほど追いつめられていたのか。陽菜の胸中は友人さえも知らなかった。

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