プーチン退陣説の根底に流れる「8月のあの記憶」

エリートに背かれはじめた独裁者
週刊現代 プロフィール

仕掛けるとしたら、ゴルバチョフに対しクーデターを起こした当時のKGB、今のロシア連邦保安局(FSB)でしょう。プーチンの出身母体ではありますが、理由はやはり、一番情報を持っているということです。ゴルバチョフの時と同様、プーチンがモスクワを離れた時が怪しい。トルコ訪問が検討されていますが日程が未定なので、その前後は要注意でしょう。

また、プーチンは8月でなく、例年9月に休暇を取ります。それを考えると9月の可能性も捨てきれません

2021年9月、釣りに興じるプーチン photo by Gettyimages2021年9月、釣りに興じるプーチン photo by Gettyimages
 

現場を知らない政治の介入

軍事心理学が専門の同志社大学教授・余語真夫氏は、実行計画を立てるとすれば、ロシア軍元将校集団、あるいはウクライナ侵攻で役目を解任された元司令官クラスの将校たちではないかという。

ウクライナ侵攻では、軍事攻防の観点からみて、ロシアは軍事大国の評価を裏切る大変におろかでみすぼらしい戦術・作戦を展開しています。

正確な指揮系統が不明、兵士の士気が低く、将校が複数戦死するという、通常ではありえないことが起こっている。戦車も冷戦時代のものを引っ張り出して戦線に投入している有り様です

そして、こうした混乱には、現場を知らない政治の介入が影響しているという。

全ロシア将校会代表のレオニード・イワショフ退役大将、そして過日、総司令官に就任したかと思えばもう解任されたと伝えられるアレクサンドル・ドヴォルニコフ陸軍上級大将。表に名前の出ているこの二人は、ウクライナ侵攻に反対しています。いくらプーチンの決断といえども個人の信念は曲げられない。

他にも軍を脱退した将校や兵士は増えつつあるので、彼らが連携すれば、軍を掌握し、クーデターを起こす可能性は高くなります」(余語氏)

これまでロシア研究者の間では、「ソ連、ロシアの軍隊は政治に介入しないという文化があり、クーデターはありえない」という意見が大勢を占めていた。しかし余語氏は、今回は必ずしもそうとは言えないという。

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