私をじっと見ているけれど

……?
いつの間にか顔だけこちらに向けていた。私をじっと見ている。見返しても、黒目の奥まで覗いても、どういう感情の顔かわからない。少しの沈黙のあとまた母が喋り出す。
「東京にいるはずなんですけどねえ、コロナを甘くみたらダメだって伝えてもらえます?」

「……すみだよ」と返す。

「……そう……すみこ。ああ、こう言えばいい。孫抱いたら、ママいろいろ治ると思うって伝えてください。これが一番こたえるはずだから」

こたえた。

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……スゥゥっと寝息が聞こえてきた。
そっと部屋を後にし、フゥゥっと身体中の空気を吐き出しながら階段を降りた。干し柿みたいに萎んだ。

下に降りると居間にほろ酔い加減の父がいた。「ママは大丈夫なのか?」と聞いてくる。
自分で見て来いと言いたいが、ここにエネルギーを使いたくない。
「今寝た。様子見だけど、急変したら救急車呼ぶかもだから。パパついて来ても足手まといだし、お姉ちゃん一人残すわけにいかないし、一緒に留守番しといて……今、ママ、私のこと忘れたよ」と要所要所に嫌味が溢れた。

「そうかあ。でも今日のところは薬が言わせたんだよ。薬が切れるのを待とう。この先もっと壊れていくとしたら、今回のは今後の予行演習と思ったらいい。こっちも強くならないと」
ぶっ殺したいと思った。こんな予行演習があってたまるか。どこにでもいきくされ。日常で中々使わない言葉を呟いた。