2020年コロナで社会の経済活動の多くが止まってしまった時のこと。久々に実家に帰ったにしおかすみこさんが目の当たりにしたのは、家の中が砂場のようにジャリジャリし、ゴミが溢れた家の中で、背中をまるめて別人のようになっていた母の姿だった。

明らかに認知症だと感じる母の行動に、実家での同居を決めたにしおかさんは、それから様々な問題に直面してきた。その体験を率直に、そしてユーモア満載で綴る連載「ポンコツ一家」。にしおかさんはその初回から以下のように愛をこめて書いている。
母、80歳、認知症。
姉、47歳、ダウン症。
父、81歳、酔っ払い。
ついでに私は元SMの一発屋の女芸人。46歳。独身、行き遅れ。
全員ポンコツである

連載10回の今回は、ちょうど「ゴミ屋敷化」発覚から1年経った2021年6月、コロナ禍での母についてお届けする。

大きな話題となった連載第1回
にしおかすみこさん連載「ポンコツ一家」これまでの記事はこちら
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朝5時にくる「ママ速報」

2021年6月末、朝5時。
ここ数ヵ月毎朝必ず「ママ速報」と題し
「昨日のコロナ感染者、東京〇人、千葉〇人」と母からメールが届く。昨日という時点でママ速報に時差がある。

その後立て続けに「もう東京? 手洗い、うがい、マスク、人用心ね」と。

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私はその2通のメールを千葉の実家の2階、自室のベッドで受け取る。
1階から遠慮がちに絞ったテレビ音が薄い壁と階段をつたい、ぼんやりと聞こえてくる。我が家のコロナ番長の朝は早い。

少し早いが私も起きる。のそりのそりと階段を素足で降りる。
実家に戻り、そろそろ1年が経つ。何が変わっただろう……母の忘れる速度は早くなった。私も、きっと母自身も気持ちが追いついていない……階段の終わりに気づかず、エアーの階段を踏み、足がカクカクンと空回る。