深海で妖しく輝く「発光ザメ」がいた! なぜ光る? どう光る?

44万個の発光器をもつツワモノも!
山本 智之 プロフィール

世界最大の「光る脊椎動物」が日本にも!

ベルギーの大学とニュージーランド国立大気水圏研究所の研究チームによるもので、全長が人の背丈ほどにもなる大型のサメが、全身から光を放つのを確認した、というものだ。

水深200~1800mに生息するヨロイザメ(Dalatias licha)で、成長すると全長1.8mに達する。鎧(よろい)という名前のとおり、その体は硬い皮膚で覆われている。

大西洋や地中海を含む世界各地の海に広く分布するサメだが、茨城県以南の太平洋や長崎県沖の東シナ海など、日本の海にも生息している。

【写真】ヨロイザメと、その発光のようすヨロイザメ(写真上)と、その発光のようす(写真下)(ジェロム・マルフェット氏提供)

ここに掲載した写真は、捕獲した個体を船の上で撮影したもので、深海底での姿ではないが、ヨロイザメの体全体が青白く輝くようすを見事にとらえている。ヨロイザメは、発光するサメのなかで最大種であるだけでなく、「世界最大の光る脊椎動物」でもある。

江戸川乱歩(1894〜1965年)の『夜光人間』という小説には、全身から光を放つ"怪人"が登場するが、海の中には実際に、成人男性ほどの大きさの発光ザメが生息していたのである。

全長40~50cmの小型な種類のサメであれば、「大型の捕食者から自分の身を守るために発光する」というのは理解できる。しかし、生態系の頂点に近い大型のヨロイザメが、どうしてわざわざ光るのか?

新たな発見によって、「光るサメ」の謎はさらに深まったとも言える。

人工出産に成功

前出の佐藤さんは、生態調査に加えて、将来は水族館ならではの強みであるサメの飼育技術を活かした研究にも取り組みたいと意欲を見せる。現状では、野外で採集したヒレタカフジクジラの親魚は短期間しか飼育できないが、それを長期化するのが目標の一つだ。

「水槽で長期間にわたって飼育することで、エサをとる行動と発光の関係、よく光る季節や時間帯があるかどうかなどについて、詳しく調べてみたいと思っています」

ヒレタカフジクジラは胎生のサメで、母親の子宮内で胎仔(たいし)が育つ。

沖縄美ら海水族館と沖縄美ら島財団総合研究センターの研究チームは、サメの子宮内の環境に近い状態を再現できる「人工子宮装置」を独自に開発した。サメの胎仔を入れたタンクに液体を循環させ、酸素や栄養を与える一方、老廃物などはフィルターで除去できるという"すぐれもの"だ。

【写真】「人工子宮装置」で育成中のヒレタカフジクジラの胎仔「人工子宮装置」で育成中のヒレタカフジクジラの胎仔(海洋博公園・沖縄美ら海水族館提供)

研究チームは、死んだメスのヒレタカフジクジラの体内にいた胎仔をこの装置に移して5ヵ月間育て、2021年に人工出産させる実験に成功している。こうした新たな手法も今後、飼育下での生態解明に役立つと期待されている。

沖縄美ら海水族館では、人工出産によって誕生した胎仔の飼育を現在も続けており、近い将来、展示することも考えているという。

私たち人間の目が届きにくい深海の世界──。そこに暮らす「光るサメ」たちの驚くべき生態がいま、少しずつ明らかにされつつある。

光るサメをめぐる近年の研究結果は、広大な海にはまだまだ私たちの知らない世界が広がっていることをあらためて教えてくれます。その一方で、私たち人類は、世界の海の環境そのものを根底から変えてしまうほどの力をもつようになりました。

人為起源の温室効果ガスの増加にともなって、陸上の気温が上昇するだけでなく、「海の温暖化」も進行しつつあります。その結果として、私たちの食卓にも将来、大きな影響が及ぶことが避けられない見通しです。

日本列島をとりまく海とそこに暮らす生き物たちにいま具体的に何が起きていて、それは今後、どう変化していくのか──。山本智之さんの最新刊『温暖化で日本の海に何が起こるのか』で詳しく解説されています。ぜひご一読ください。

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