2022.06.22
# 音楽

「天文台の職員」になるはずが…?山下達郎インタビュー「音楽だけは自分に嘘をつかなかった」

シンガーソングライターの山下達郎さんが、11年ぶりのニューアルバム『SOFTLY』を6月22日に発売します。『ミライのテーマ』や『RECIPE (レシピ)』など既発のシングル7曲を含む15曲で構成された新作や、昨今の社会情勢についての思いを聞きました――。

(取材・文/白鳥純一)

 

アルバムの持つ意味に向き合った 11年ぶりの新作

――11年ぶりの新作『SOFTLY』を完成させた率直な感想をまずはお聞かせください。

これまでに14枚のオリジナルアルバムを作ってきましたけど、アナログ盤だった頃とは、環境がまったく変わってしまいました。曲を書いたり編曲したりという作業自体はあまり変わらないのですが、変化していくメディアに対して、こちらがどのように合わせていくかを考えないといけない。僕らミュージシャンが、「LPからCDにしてほしい」って頼んだわけではなかったんですけど(苦笑)。

実は、長い間アルバムをリリースしてこなかったのは、音楽配信が広まりつつあった2000年代の終わり頃に、「レコードやCDの販売だけでは、そろそろ生活ができなくなるだろう」と思い始めたことも背景にはあるんです。色々なことを考えた結果、2008年にライブ活動を再開することを決め、そこからは毎年ツアーに出て、50本程の公演を行う日々を11年ほど過ごしましたが、コロナ禍の影響で、思うような活動ができなくなってしまいまして。そのようなタイミングで、久しぶりにアルバム制作に取り掛かることになりました。

――全15曲で構成されている『SOFTLY』の制作には、どのくらいの期間を要しましたか?

準備期間に時間を費やしたおかげで、レコーディング自体はここ数十年ないぐらいの早いスピードで進み、半年ほどで作り上げることが出来ました。ちょうどデジタル上で音を再現するノウハウが一段と進歩を遂げているタイミングでアルバムを制作出来たことは、本当にラッキーだったと思います。2013年頃から2019年にかけて録音したシングルも、歌やギターの音をそのまま残しつつも、シンセサイザーの音などはオリジナルに忠実に新たに録音し直し、全体の聴感を統一させるためのリミックスを施して、完成に至りました。

――サブスクリプション(※山下達郎さんは未解禁)などが浸透しつつある時代にリリースすることになった、新作への想いをお聞かせください。

「アルバム」という形態は、もう日本にしか存在しないものなのかも。アマゾンミュージックやiTunesでも、一応はアルバムの順番通りに楽曲が並んではいますけど、曲別のダウンロード数は明確に表示されていますし、AIが履歴を元にしてそれぞれの好みに合った曲を見つけてくるような流れは、今後も進んでいくように思います。「アルバムの在り方が変わりつつある時代のなかで、発売する意味は何だろう?」という課題と向き合いながらも、新譜という形でリリースさせていただいた。「ありがたい」の一言に尽きますよね。

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