『パーフェクトワールド』の作者が、性暴力の「もう一人の被害者」を描いた理由

『工場夜景』刊行にあたって

2017年の「#Me Too」ムーブメント以来、日本でも映画監督や俳優による被害の告発が相次ぐなど、日々数多くの性暴力事件が報じられている。しかしそれらも氷山の一角に過ぎず、実際には声を上げられない被害者も数多くいるのではないか。

同時に直接的な被害に遭ったわけではないため、見落とされてしまう「被害者」もいる。被害者の家族や周囲の人々、そして加害者の家族もその一人だ。そんな被害者家族と加害者家族の関わりを描いた漫画『有賀リエ連作集 工場夜景』の発売を機に、何を思いながら創作に取り組んだのか、作者の有賀リエさんにお話を伺った。

有賀リエ(あるが・りえ)
漫画家。2011年、「Kiss」の新人賞Kiss INにて、デビュー作となる『天体観測』がKissゴールド賞を受賞。その後2014年から「Kiss」で『パーフェクトワールド』(全12巻)の連載を開始。2019年には同作にて第43回講談社漫画賞少女部門を受賞。実写映画化、TVドラマ化などのメディアミックスでも人気を博し、単行本は累計225万部を突破した。2022年、「モーニング」にて『有賀リエ連作集 工場夜景』を連載。
 

「もう一人の被害者」

――『工場夜景』に登場する碧と貴臣は幼馴染の高校生で、お互い惹かれ合いつつもなんとなく言い出せずにいます。ここまではラブコメとしてよく見る設定ですが、碧の父が貴臣の母に対して起こした性暴力事件をきっかけに、2人の関係は大きく変わっていきました。

©有賀リエ

セクシャルハラスメントや性暴力を題材にしたフィクション作品も数多くあるなかで、被害者家族と加害者家族、特にそれぞれの子どもに焦点を当てたのは、かなり珍しいのではないでしょうか。この視点に至った経緯について、教えてください。

有賀:連日報道される性暴力のニュースは関心を持って見ていましたが、とりわけ創作のきっかけになったのはTwitterなどのSNSです。かつては世に出ることがなかった被害者本人の声が聞こえるようになり、過酷な状況などが可視化されて、ずっと痛ましさを感じていました。同時に、そういった被害者の声を見るたびに頭をよぎったのが、被害者や加害者の家族、とりわけ子どもの存在です。

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