男女雇用機会均等法が成立して37年。女性の社会進出を推進する一方で、世界経済フォーラムが発表する「ジェンダーギャップ指数2021」の「経済」分野における日本の順位は156か国中117位。これは各国がジェンダー平等に向けた取り組みを加速させている中、日本が遅れをとっていることを表している。決して男性と同等レベルと言えない労働環境に身を置く女性たちは、キャリアと子育ての両立や給料の格差など、何かと窮屈さを感じざるを得ないことが多い。

そんな中、キャリアを築く女性たちの間で今、注目を浴びているのが「コーチング」。キャリアの育成から職場での人間関係の悩みなどを話すことで内省を深め、本来の力を引き出すコミュニケーションによる手法だ。コーチングはなぜ今必要とされているのか、ニューヨークを拠点にコーチングを通して積極的に日本女性の活躍推進に取り組んでいる大塚ちづるさんにお話を伺った。

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自分を正確に把握するのは難しいこと

「よくコーチングというと『何を教えてくれるの?』と言う方もいるのですが、『コーチ』の由来は『馬車』。コーチングは行きたい所へ『引っ張っていく』という意味なんです。自分が問題視していることや満足していることなど、本来の気持ちを頭の中で整理するプロセスを手助けするのがコーチングです。今、社会のグローバル化がますます加速して情報、テクノロジー、価値観の変化と、とにかくスピードが速いですよね。ということは、それだけ常識も変わってきているということです。そんな中ではなかなか自分の行動が相応しいと自信を持つのは難しいことですよね。自分を正確に把握しているという人も正直、少ないかと思われます。ならば、信頼の置けるプロフェッショナル、つまりコーチに聞いてしまった方が早いのではないかと思うんです」と語る大塚さん。自身にもイギリス人のコーチがいるそうで、「頭の中のあらゆることを話すので、何かと悩み相談室みたいになっています(笑)」と明かす。

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米国投資銀行での20年以上の人事経験を経て独立し、人材育成に特化したコンサルタント業務を行ってきた大塚さん。コンサルタント業務に力を入れる一方で、日本社会において女性の活躍が道半ばということに憂慮し、プロフェッショナルの女性が支え合えるような場があればと思い「THE CHOICE」という女性のネットワーク組織を立ち上げた。そんな大塚さんが、コーチングをしていて肌で感じたことは?

ワーキングマザーの過小評価ですね。企業の組織開発コンサルをしていると、ワーキングマザーの悩みを多く聞きます。例えば『在宅勤務をいつ申請していいかわからない』という悩みは、本当は自分の生活が軸になっていなければいけないのに、他人に判断を委ねてしまっているのがわかる例。その場合は、それを上司に伝えるというのはどのくらいハードルが高いのか、上司との信頼関係がどの程度なのか、その人自身が抱えていることを明らかにして、クリアするにはどうすればいいのかを引き出しながら組み立てていきます。

上司が男性で、部下がワーキングマザーの場合、お互いが遠慮して言いづらくなっているケースもとても多いです。『こんな風に言ったらわがままと捉えられるんじゃないか』とか、自分のニーズをしっかりと把握しているにも関わらず、『申し訳なくて言えない』と。男性の上司も、親切心もあって『大変なんじゃないか』『どのタイミングで声を掛けたらいいのかわからない』と言うんです。こういうケースは、お互いの遠慮そのものが問題となっているのでそれを解決できるように、誰がどのタイミングでどんな頻度で連絡を取るかなどすごく細かいチェックリストを作って対応するなどしています」