新卒からずっと宗教法人職員だったぼくに一般企業勤務は無理なのか? 

36歳で巨大教団から転職!?(後編) 
正木 伸城 プロフィール

人にさしのべた手が、自身の助けに――転職、成る 

「祈りは叶うよ!」 

「信仰を貫けば、必ず報われる!」 

「正義の道で勝利を勝ち取れ!」 

こういった言葉が飛び交う信仰の道は、ぼくには厳しかった。途中から、ぬぐえないほどの違和感がわいて離れなくなった。その違和感を心にしまって生きると、苦しかった。信仰で幸せになるどころか、自分を偽って生きる苦痛が激しすぎて、不幸になっている感覚しかなかった。だからぼくは、教団「不適合者」なのだろう(実際、教団本部を辞めた後、そう言われたことが何度もあった)。

自分を偽らずに生きる。 

これは、もしかしたら多くの人にとっての人生のテーマかもしれない。 

『死ぬ瞬間の5つの後悔』という本がある。同書によると、死を目の前にした人が抱く後悔は、基本的に、自分の本心に向き合わなかったことに起因するらしい。自分に正直に生きたいという願い、また、そうやすやすと生きられない現実への挫折感には、どこか普遍性があるのだと思う。 

 

ぼくは、その挫折感を宗教的な変性バージョンで味わった。ふつうではない経験ではあるけれど、最後の最後に「おのれ自身に忠実であれ」という道を選び、その第一歩を転職からはじめた。 

「恩返しさせてください。親戚に相談してみます」から1カ月。“人事”の方から電話がかかってきた。 

「弊社にて、ぜひ面接をさせてください」 

ぼくは、飛んで喜んだ。そして、きちっとしたスーツに身をつつみ、面談にのぞんだ。超高層ビルのなかにある会社のエントランスがまぶしかった。「こんなところで働けたらな……」。それは、この面接の2カ月後に現実になった。36歳にして始めた初の転職が成功し、ぼくは中途入社の社員として歓迎され、仕事を開始することができたのである。 

「新聞記者をしていた正木伸城と申します。どうぞ……よろしくお願い致します!」 

入社時に社員のみなさんの前であいさつをした時、ぼくは涙をこらえきれなかった。後に聞いた話だが、この転職にはさまざまな方が尽力してくれた。感謝しかない。

関連記事