2022.06.23
# ライフ

「幸福の敵」は“他人と比較すること”——「他人が良いと思うもの」に自分の幸せはない

絶対悲観主義(5)
みなさん、がんばりすぎていませんか?
そんなに心配することはありません。なぜなら、こと仕事で自分の思い通りになることは、ほとんどないから。

この身も蓋もない「真実」を直視して、成功の呪縛からもっと自由になろう。そうすれば目の前の仕事に対し、もっと気楽に、淡々とやり続けることができる。
著者が実践してきた「GRIT無用、レジリエンス不要」の仕事の哲学『絶対悲観主義』から注目の章を特別公開!

信用と人気

江戸時代に井原西鶴が強調しているように、今も昔も信用は商売にとっていちばん大切な無形資産です。僕が私淑している昭和の大女優、高峰秀子さんは「信用」と「人気」を峻別しています。ブランデッドが信用であるのに対して、ブランディングは人気を志向します。

昭和の大女優・高峰秀子

需要がないと仕事にはならない。ただし、その需要は決して人気であってはいけない。人気があるうちは、周りが何でも言うことを聞いてくれる。全能感を持ち、根拠のない楽観主義に走る。女優は文字通り人気商売です。普通の女優は人気を求める。しかし、人気はあくまでも一時的なもの。最後に残るのは信用しかない。「高峰秀子が出ている映画だから大丈夫だ」──これが信用です。映画出演でも本の執筆でも、高峰さんは仕事生活の根底に信用を置いていました。

人気が微分値であるのに対して、信用は積分値です。ブランディングは微分値を極大化しようとする。KPI(Key Performance Indicator)が設定できるし、予算も組め、効果測定もできる。一見コントロールできそうに思いがちですが、お客の心はコントロールできません。コントロールできないものを無理やりコントロールしようとする。ここに多くの間違いの原因があります。

 

考えてみると、マスプロモーションを一切しないというのが商売の究極の姿なのかもしれません。例えばスターバックス社は、マスプロモーションにほとんど予算を使っていません。最近は変わったかもしれませんが、創業から長きにわたって広告予算はほとんどゼロでした。ベンチャーの頃は顧客認知を急ぎたくなるのが普通だと思いますが、創業者のハワード・シュルツは本当の意味での信用がものを言うことを理解していたのだと思います。

今どきの大きなローファームは立派な事務所を構え、ブランディングに余念がありません。個人向けの弁護士事務所も、電車のサイネージに広告を出したり、テレビでCMを流したり、熱心にプロモーションをするところがあります。ところが、僕が尊敬している渉外弁護士の事務所にはホームページがありません。彼は「弁護士が営業やマーケティングをはじめたら、その時点で終わり」と言っています。本当に仕事を依頼したいのであれば、住所や電話番号を自分で調べて、向こうからやってくるはずだ──言われてみればその通りです。信用と評判さえあればお客さんからやって来る。そして、仕事を引き受けた以上は決して期待を裏切らない。こうしてますますブランドが強くなります。

ゴルゴ13は究極のブランデッドの体現者です。SNSを駆使したブランディングに余念がないゴルゴ13には仕事を頼む気にはなりません。

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