平均寿命が延び、「人生100年時代」が当たり前になってきた現在。定年延長とともに、年金の「繰り上げ/繰り下げ受給」もしばしば話題に上ります。
竹田信義さん(仮名・69歳、以下同)が、老後の生活をシミュレーションして検討し繰り上げ受給を決めた経緯は、【前編】『年金を60歳から「繰り上げ受給」して、老後の生活が「崩壊寸前」な男性の悲劇』で詳述した通りです。しかし予想外の事態に見舞われ、竹田さんの老後は想定通りにはいかなくなってしまいました…。
急転直下、妻のすい臓がんが発覚
いよいよ年金の支給が始まった竹田さん。順調に働きながら2ヵ月ごとに年金を受け取り、給与が下がっても問題なく暮らしていました。
「やっぱり繰り上げて年金をもらって正解だったな」
そう思っていた竹田さんでしたが、その矢先に竹田家に大変なことが起こります。定期健診で「血糖値上昇」を指摘された妻の美江さんが大学病院で精密検査を受けたところ、「すい臓がん」だと診断されたのです。

ここ1年間ほど、美江さんはしきりに「お腹が痛い」「食欲がない」と口にしていて、竹田さんも何度も病院へ行くように言っていました。しかし百貨店での勤務に追われて、後回しになっていたのです。
「あのとき無理矢理にでも病院に連れていくべきだった。もし発見が早かったら…」
と竹田さんは今でも悔いています。