フェイク画像あふれるウクライナ戦争で、「報道写真」に求められる役割

写真に写った現代の肖像(3)

ウクライナ戦争と報道写真家の役割

2月24日にロシア軍がウクライナに侵攻してから、この原稿を書いている時点で早くも4か月近くが経つ。この間、現地からは写真や映像が洪水のように押し寄せ続けている。

前線での戦闘、破壊し尽くされた都市、虐殺現場の光景、あるいは膨大な避難民などのイメージは見た者の感情を強く揺さぶるが、同時にかつてなく多層化した映像環境も実感させる。報道機関が取材した写真とビデオ映像、戦争当事国のプロパガンダ、市民や兵士ら当事者のSNSを通じての発信、加えて戦闘地域を俯瞰撮影した衛星画像などが混在しているからだ。

戦争のあらゆる面があらゆる手段で可視化されているようにも思われるが、実際はそうではない。両国政府によって報道管制が敷かれているし、意図的な誤用やフェイクニュースによって陰謀論へと誘う罠が撒かれている。現代の「ハイブリッド戦争」では、ウクライナの大地とともに、私たちの手のひらにある小さなデバイスも主戦場になっている。

ロシア軍の攻撃を受けた首都キーウ[Photo by gettyimages]
 

こうした情報戦のなかで、存在感が際だっているのが伝統的な国際報道機関の仕事だと思う。例えばイギリスのロイター、アメリカのAP、フランスのAFPの世界三大通信社、あるいはニューヨークタイムズなどのWEBサイトを見れば、写真や映像コンテンツのクオリティと豊富さが分かる。

これら報道機関はもともとヴィジュアル報道にも強みを持っていたが、ここ数年この分野により注力してきた。写真や動画が記事へのエンゲージメントを高めるからだ。同様にフェイク画像などのファクトチェックにも組織的に取り組み、大きな成果を挙げている。

このような方針はもちろん業績にも大きく貢献するものだ。例えばAFPは2020年度の決算で最高益を達成したが、業績報告の中で、デジタル調査ビジネス(ファクトチェック)とビデオ映像コンテンツの配信事業を主な要因として挙げているのだ。

今回、報道現場におけるその活動を具体的に知るべく、AFPのナイロビ支局でチーフカメラマンを務めている千葉康由氏にリモートで話を聞いた。千葉氏は、スーダンの治安部隊が反政府デモを弾圧したことへの若者たちの抗議を捉えた印象的な作品「Straight Voice(まっすぐな声)」で、2020年の世界報道写真コンテストで大賞を獲得したことでも知られるトップフォトグラファーだ。

カメラマンの千葉康由氏

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