2022.06.18
# 量子コンピュータ

世界的に投資が急拡大した「量子コンピュータ」の正体

「ヒト」と「カネ」が集まる理由
かつては物理学者らがその実現可能性などを巡って知的な議論を戦わせては楽しむ「科学の楽園」であった。それがいつの間に巨大IT企業の次世代プロジェクトにして、巨額の投資対象へと変貌した——
小林雅一氏の新刊であり「量子コンピュータ」の入門書『ゼロからわかる量子コンピュータ』から、今や巨額の投資対象となった「量子コンピュータ」とは何か、その基本原理を解説した一節を抜粋してお届けします。

世紀の発明に向かって産業界の「人」と「金」が激しく動いている

2021年10月、米国のアマゾン・コム(以下、アマゾン)はカリフォルニア州パサデナに新たな研究拠点を設け、ここで待ちに待った「量子コンピュータ(Quantum Computer)」の自主開発に乗り出した。

これに先立つ同年5月、米アルファベット傘下のグーグルもカリフォルニア州サンタバーバラに「量子AIキャンパス」を開設。ここで今後、数十億ドル(数千億円)をかけて汎用「誤り耐性」型の量子コンピュータを開発していく計画を明らかにした。
新興企業への投資も急拡大している。

2021年、ニューヨーク証券取引所(NYSE)などでは「SPAC(特別買収目的会社)」と呼ばれる特殊な上場手法を使って、一度に数億ドル(数百億円)もの巨額資金を調達する量子スタートアップ企業が続出。これらを中心に量子コンピュータ関連の投資額はゆうに15億ドル(1600億円以上)を超えるなど、史上最大規模に達した。

新型コロナ禍における超金融緩和バブルの影響を差し引いても、この分野への期待が急激に高まっている証しといえよう。

難解・深遠な量子力学を理論的な礎とする量子コンピュータの研究開発は、そのアイディアが発案された1980年代から長年にわたって、物理学者らがその実現可能性などを巡って知的な議論を戦わせては楽しむ「科学の楽園」であった。

それがいつの間に、またに、巨大IT企業の次世代プロジェクトにして、生き馬の目を抜くウォールストリートにおける格好の投資対象へと変貌を遂げたのか?