スタジオジブリ 宮崎駿監督をどう評価するのが正しいのか

村上春樹と並ぶ国民作家
『借りぐらしのアリエッティ』も大ヒット

週刊現代 プロフィール

 宮崎監督は'63年、東映動画(現・東映アニメーション)に入社。'79年の『ルパン三世 カリオストロの城』でアニメ映画監督としてデビューした。その後手がけた『風の谷のナウシカ』('84年)『天空の城ラピュタ』('86年)『となりのトトロ』は、いまでも名作として愛されているが、当時は一部に熱心なファンがいるだけで、興行的に成功とは言えなかった。

 転機は'88年。昭和的な長閑な風景を描いた『となりのトトロ』のビデオが発売され、大ヒット。翌'89年4月に『トトロ』がテレビ放送されると、視聴率21.4%を記録した。この頃から過去の作品が再評価されていく。宮崎監督は昭和の終わりとともに台頭した作家と言えるだろう。

 『最後の国民作家 宮崎駿』の著書がある評論家・酒井信氏は時代背景とジブリの関係をこう分析する。

「平成に入り、円高デフレでモノが溢れ、仕事が単純労働化し、風景が均質化、社会全体が100円ショップの店内のようになってきた。いわば『モノ、仕事、風景』3つの均質化の時代です。そのなかで、宮崎監督は身近なモノに執着し、道具をすごく丁寧に描き、仕事や風景も同様に細かく描く。そうやって均質化していく社会で失われていくものを補うことで、ファンのニーズに応えていったんです」

善と悪

 『風の谷のナウシカ』の興行的成功を機に、'85年、スタジオジブリを設立。『魔女の宅急便』('89年)の後にはスタッフを全員正社員とした。宮崎監督は手作業にこだわり続ける。ジブリ作品の中でも農作業の風景など人間の手による仕事はひと際丁寧に描かれている。

 単純な自然礼賛主義でなく、自然の中に潜む暗いもの、恐怖への視点もある。学習院大学文学部教授で評論家の中条省平氏はこのように話す。

「『ナウシカ』はエコロジーな立場に立っていますが、盲目的なエコロジーに対する批判的なメッセージもあります。作品中に腐海という悪いものを溜め込んでいる海が出てくる。それを消してしまえという勢力と、保護しようとする人たちが対立します。前者からすれば腐海は汚染の原因ですから、除去することは一種の『善』の立場。

 しかし、腐海の下には非常に美しい海が広がっている。つまり、腐海は自らが汚染された『悪』であるにもかかわらず、きれいな水を作り出すフィルターになっていた。この作品は、悪い物を消すことが、本当にいいことか、悪いことなのかは人間の浅知恵ではわからないということをナウシカという少女が発見する物語。

 宮崎さんの世界は、人間が自然と共生することを肯定していますが、硬直したエコロジー思想には与しないというメッセージが強く感じられます」

絵ですべてを語る

「人と自然の共生」というテーマが根底にある宮崎アニメ。つい先日も、ジブリのフリーマガジン『熱風』で宮崎監督が「iPadをなぞる動きはマスターベーションのようだ」と揶揄したことが話題になった。

 だが、『トトロ』に登場する猫バスは文字通り猫とバスの融合で、機械文明を全否定しているわけではない。単にエコ的な視点だけで括られることを嫌悪しているのだ。