大学数学にも浸透してきた「暗記だけの学び」

理解を大切にした学びを伝え続けたい
芳沢 光雄 プロフィール

プロセスの理解を大切にした学び方を伝えたい

なぜ筆者に多様な質問が集中するかについて、ゼミナールの学生に尋ねたことがある。学生は「就職委員長時代に夜間のボランティア授業『就活の算数』を行ったり、今年度のゼミ生数が19人で数学が嫌いな人も多くいたりするように、先生にはいろいろな人達が楽しく相談できる不思議な性格があるからでしょう」と言う。

考えてみると「朋あり遠方より来る、また楽しからずや」の精神で大学教員人生44年間を過ごしてきた。そのうち24年間は数学科で、20年間は現在の桜美林大学リベラルアーツ学群などで教えてきた。大学の授業で約1万5千人を教えたほかに、小中高校生対象の出前授業でも約1万5千人に教えたことになる。

出前授業の半分は手弁当であるように、若い人達に数学について話すことが好きなだけに、来年3月で定年退職になることを思うと複雑な気持ちにもなる。

それ以降については、犬に算数を教えるか、ボランティア的な数学の授業を不定期で行うか、実はそのような選択で迷っている。

かつて高校生の頃、飼っていた犬に「一対一の対応」を省いて整数を教えようとして失敗した苦い思い出と、児童養護施設でのボランティア授業で児童からいただいた質問が忘れられないことがある。

そして数学と数学教育の両方で大学教員人生を送ってきたことの締めくくりの45年目の今年度は、大学数学の「入り口」の部分について、プロセスの理解を大切にした数学の学び方をいろいろ示す活動に力を入れたいと考えている。

この度、『新体系・大学数学 入門の教科書』(上・下)を上梓できたことは、そうした活動の第一歩のつもりである。筆を進めるにあたっては、一歩ずつ丁寧に記述することを心がけてきた。

大学数学の導入部分のガイドとしてはもちろん、かつて「低くない壁」に苦労された方や、筆者と同じように青年諸君を導こうとされている諸氏にも、ご一読いただければ幸いである。

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