大学数学にも浸透してきた「暗記だけの学び」

理解を大切にした学びを伝え続けたい

「暗記だけの学び」の弊害

筆者は何年間にも渡って、初等中等教育段階の算数・数学で「理解を無視した暗記だけの学び」が広まったことの弊害とその改善策について、多様な事例を示しながら著書、新聞、雑誌、インターネット等の記事を介して訴えてきた。

本稿では他で述べたことを繰り返すことはなるべく避けたいので、それらの紹介は割愛させていただく。しかし、「暗記だけでは時間が経つとすっかり忘れること」、「暗記だけでは応用力が身に付かないこと」などには、共感していただいた感がある。

実際、暗記だけの算数・数学の学びは、大学教育にマイナス面として表れてきたばかりでなく、大学生が就活の適性検査等で信じ難い間違いをすることも表面化したこともあって、大学教育の現場でもこの問題は無視できない課題となった。そのような背景があって、筆者は理系の某大学のFD(Faculty Development)に招かれて講演したり、文系が中心の某大学の学長自らが対策を相談しに来られたりもしたことがある。

【写真】暗記だけの算数・数学の学びによる、大学教育の問題暗記だけの算数・数学の学びは、大学教育にマイナス面として表れてきた photo by gettyimages

昨年、筆者は1年間に渡って【数学間違い探し】シリーズを連載した。毎回、多くの読者に楽しんでいただいたが、その根底には単に「やり方」の暗記だけの学びでは間違いを探すことは困難で、「理解することによって間違いを見付けることができる点が面白い」、というコンセンサスが出来上がったように思う。

もっとも、「40-16÷4÷2」を取り上げた2021年6月16日の記事(〈【数学間違い探し】大学生でも間違える計算「40-16÷4÷2」の答えは?〉)が驚異的な閲覧数になった理由については、未だ謎のままである。

大学数学の入門段階の学びに目を向けると、微分積分でも線形代数でも、乗り越えるべき壁は低いとは言えないものがある。全分野に共通する集合論、微分積分の基礎概念にあるε-δ論法、線形代数の基礎概念にある線形空間、等々の考え方にもある。
そのような事例をいくつか紹介しよう。

関連記事