子どもが触れる性の知識は、その子の年齢や成長に適した、できるだけ正確でポジティブなものであってほしい。性をタブー視、もしくは「なかったこと・隠すべきもの」として育てられてきた自分自身への性教育に疑問を抱く保護者たちは、強くそう思っているだろう。

だがその一方で、いざわが子に対峙すると自分の性知識の乏しさを痛感したり、植え付けられた性へのネガティブなイメージにとらわれて、ひどく動揺したりスルーしたりと、まるで嫌だった親そっくりの対応しか取れないことに愕然とする。

産婦人科医で2児の母でもある遠見才希子さんによる「性とからだの本」シリーズは、子どもが読む性教育の絵本であると同時に、わが子をきっかけに自分の性についても学び直したい親世代にもぴったりの良書だ。

遠見さん作の「性とからだの絵本」3部作。左から、『うみとりくの からだのはなし』(絵・佐々木一澄)、『あかちゃんが うまれるまで』(絵・相野谷由起)、『おとなになるっていうこと』(絵・和歌山静子)すべて童心社

前編で紹介した1、2作目に続き、第二次性徴やジェンダー問題にも踏み込んだ3作目『おとなになるっていうこと』について見ていこう。家庭内でどのように「性」を扱うべきか、遠見先生自身も考え、苦悩して生まれたストーリーとは?

「性とからだの絵本」3部作の作家で産婦人科医の遠見才希子さん。撮影/柳原久子
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扱いが難しい家庭内での「性」

最近、公共の場ではある程度、配慮されるようになった子どもの性に関する自主的な決定権も、家庭ではいまだにないがしろにされがちだ。2020年12月に厚労省は「混浴年齢の引き下げ」を決定した(この件の詳細は別に記事にまとめている)。しかし、公共浴場での混浴はともかく「異性の親とお風呂に入りたくない」と感じる子どもの気持ちに気が付けない親は今も多い。

「仲良し家族なんだから」「親を『異性』だなんて感じる方がおかしい」という親が悪気なく発する無言のオーラ、「家の中で性に関する話はご法度」みたいな暗黙のルールが、子どもたちの「ほんとはイヤ」な気持ちを抑え込むのと同時に、性そのものに対するネガティブなイメージを植え付けているのではないか。

もともとそうやって親自身が育ってきたからこそ、わが子が性に関する疑問を投げかけてきたとき、必要以上に慌てふためき、「そんなこと言わないの!」とごまかしたり、叱ってしまうのかもしれない。

こんな悩みを抱える保護者と、大人になっていく自分のからだの変化にとまどう子どもたちに優しく寄り添ってくれるのが、「性とからだの絵本」3作目の『おとなになるっていうこと』だ。

『おとなになるっていうこと』絵・和歌山静子/童心社

親が説明しにくい第二次性徴について詳しく解説されている本はほかにもたくさんあるが、子どもが性について疑問や悩みを抱いたとき、最も安心できる場所である家庭がその悩みをどのように受け止めるとよいか、そのヒントがたくさん書かれている絵本はなかなか出会えない。この著書はその点に重きを置いている。