「山体の消滅」「新島の誕生」クラカタウ火山が伝える噴火の"破壊と創造"

火山国日本でも起こりうる危険

島はどのようにできるのか【第5回】

2022年1月、トンガ・フンガ火山の噴火が起こり、国内でも潮位の変化が観測されるなど、記憶に新しいところです。じつは地球上ではフンガ火山の噴火を上回る規模の爆発的噴火が繰り返し発生していますが、インドネシア・クラカタウ火山はそのような噴火を起こす火山の代表と言えます。

とくに1883年に発生した噴火は、地球規模で影響をおよぼし、当時の人々を震撼させました。2018年には、島の一部が崩れる「山体崩壊」が起こりました。日本でも、およそ230年ほど前に起こった島原半島・雲仙岳の噴火で、山体崩壊が発生し、大きな被害を出しています。

今回は、このクラカタウ火山での調査を軸に、山体崩壊や、カルデラが形成されるほどの噴火(カルデラ崩壊)など、地形を大きく変えてしまうような噴火について見るとともに、その研究や知見の重要性について、考えてみたいと思います。

地球規模の影響をおよぼす特大噴火

地球を震わせたトンガ・フンガ火山の噴火から半年が経とうとしている。津波による大きな被害がトンガで発生しただけでなく、日本など太平洋沿岸の各国でも、潮位の変化が観測され、その影響の大きさは記憶に新しいところと思う。この噴火の全貌はいまだに解明されていないが、歴史を振り返るとフンガ火山の噴火を上回る規模の爆発的噴火が地球上では繰り返し発生している。

今回取り上げるインドネシア・クラカタウ火山もそのような噴火を起こした火山の一つで、とくに1883年の噴火は地球規模の影響をおよぼす特大の噴火であった。クラカタウは危険な火山現象を発生する一方、新しい火山島の誕生と成長のプロセスを見せる稀有な火山でもある。

【図(地図)】クラカタウ火山の位置[1]インドネシア・クラカタウ火山の位置 wide area maps by gettyimages

クラカタウとは一体どのような火山なのか、今回はクラカタウ火山の過去から現在までを筆者の上陸調査の記録も交えながら追跡し、火山島の破壊と創造について考えてみたい。

地球観測黎明期の日本も記録していた大爆発

1883年8月27日17時50分、東京気象台に設置されていた自記晴雨儀(気圧計)の針がゆっくりと動き、異常な空気の振動を記録した。気圧変化の波が日本列島を通過したのである。その波源はインドネシア・クラカタウ火山。ジャワ島とスマトラ島を隔てるスンダ海峡の中央に位置する活火山である。

同日の10時02分(現地時間)、このクラカタウ火山で大爆発が起き、大気波動が地球全体に伝播したのだ。この波は地球を周回し、8月29日3時50分に再び東京気象台で記録された。噴火による爆発音の可聴域は東南アジアを中心として、オーストラリア大陸やインド洋の島々など数千kmの範囲におよんだ。北米やヨーロッパなどクラカタウからはるか遠方でも津波が観測された。

【イラスト】開設当時の東京気象台[2] 開設当時の東京気象台。クラカタウ火山の爆発捉えていた illustration by Japan Meteorological Agency

日本国内では1875年に内務省地理寮(後に地理局に改称)に東京気象台(気象庁の前身)が設置され、1883年に初めて天気図が出版されるなど、観測地球科学の黎明期と言える明治前期である。まだ験潮場が整備されておらず津波の観測データはないが、日本国内の複数の場所で津波の到着を示唆する情報が残されている。このようにクラカタウの噴火が引き起こした擾乱は世界各地で捉えられたのである。

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