2022.05.31

バスケ・Bリーグの「エージェント問題」、弁護士が提言する解決に必要な「2つの軸」

未整備な部分が多いエージェント関連の規則

Bリーグはコロナ禍による停滞こそあるものの、2016年秋の開幕からまたたく間に急成長を遂げた。一方で6シーズン目の終了を迎える今も、新興プロリーグ特有の“ひずみ”が残っている。特にエージェントを巡るトラブルは多く、選手やクラブが不要な不安を持たざるを得ない状況が残っている。Bリーグの規定・規約はJリーグを手本にした部分が多いが、エージェント関連はサッカーのように整備されていない。

写真はイメージ/photo by iStock

日本のバスケットボール界におけるこの問題について、半年に及ぶ研究と議論を重ねてきたのが、一般社団法人BLeSS(Business&Legal Support for Sports)の弁護士、会計士だ。彼らはクラブの経営者、選手などともミーティングを重ねたうえで、課題と改善策に関する提言を公表している*1。(経緯については前編<バスケ・Bリーグ急成長のウラで問題視される「エージェント」巡るトラブルの実態>を参照してほしい)

日本バスケットボール協会(JBA)の選手エージェント規則にはこのような規定がある。

「当該移籍が国際移籍の場合、エージェントは、FIBA発効の有効なライセンスを所持していなければならない」

つまり国境をまたぐ移籍は、FIBA(国際バスケットボール連盟)の認めたエージェントのみが取り扱える規定になっている。FIBAのエージェントライセンスは筆記試験、面接を経て取得できる「許可制」で、一定以上の英語力や知識が必要だ。ただし国内移籍のみを取り扱う場合は規定がなく、登録すら必要とされない。

世界最高峰のプロバスケリーグNBAには独自のエージェント認定制度があり、これはリーグや協会でなく選手会が作ったものだ。FIBAのエージェントにはない報酬額の上限規制もあり、選手の権利を保護する発想がより強い仕組みだ。アメリカは法的に選手会が労働団体として強い立場を持っていて、その規約にリーグとチームが従わなくてはならないという前提がある。

 

サッカー界と比較してみよう。国際サッカー連盟(FIFA)と日本サッカー協会(JFA)もFIBAと同様に、エージェントの「許可制」を採用していた。ライセンスの取得率が8〜15%と言われる狭き門だった。しかし2015年4月末から選考・審査で排除されない登録制に切り替えている。

「エージェント問題」に関する提言を執筆した中川昂弁護士はこう説明する。

「サッカー界はライセンス取得の要件が厳格な上、2008年にはライセンスの有効期限が5年に限定されていました。しかし制度導入前からエージェントの業務を行っていた者やライセンスの有効期限切れとなった者が、無資格のまま移籍交渉や契約更改交渉に関与していたようです。FIFAなどの機関が無資格で活動する動向を把握できなくなり、仮に把握できたとしても、FIFAの管理下にはないため処分をすることもできませんでした」

中川昂氏(スポーツ観戦の趣味が高じて大学時代からスポーツにまつわる法律問題を調べるようになる。日本スポーツ法学会や大阪弁護士会スポーツ・エンターテインメント法実務研究会にて報告活動等を行っている)/写真は本人提供

エージェント活動の実態を把握し、規制を実効的なものにするために、FIFAは「登録制」に切り替えた。つまり能力は問わず、申請をしたものはエージェントとして認め、そのリストを作成して管理する方法を採用した。許可制、登録制には共にデメリットがあり、FIFAは再び許可制に戻す動きも見せている。甲乙のつけがたいジレンマがあった。

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