料理研究家の土井善晴さんが話す「一汁一菜」とは、毎食の献立は「ご飯と味噌汁さえあればよい」という考え方だ。一汁一菜とは「汁飯香」。「香」とは漬物を指すが、いわく「ご飯を食べるための塩気であり、必ずしもなくていい。ご飯におかずの一品は、味噌汁を具沢山にすれば、味噌汁がおかずの一品を兼ねるので、それでOK。何か塩気が欲しいと思えば、ご飯に味噌をのせて食べればいい」。

「具だくさんの味噌汁はおかずの一品を兼ねます」「一汁一菜でよいという提案」より

それを伝える『一汁一菜でよいという提案』(2016年グラフィック社刊行/2021年に新潮文庫にて文庫化)は、2021年11月に文庫化されて以来、10刷のロングセラー。この「提言」に至るまでの、土井さんの半生と思考の過程をまとめたのが、5月に上梓した新書『一汁一菜でよいと至るまで』だ。

「一汁一菜でよいと至るまで」(土井善晴著 新潮社刊)

家庭料理に革命的な変化をもたらした「提言」に至るまでの、土井さんの料理人として、その後は料理研究家として積み重ねてきた様々な経験と試行錯誤がいきいきとつづられている。

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味噌汁にはなにを入れてもよい

本にはこうある。「一汁一菜とは、ご飯を中心とした汁と菜(おかず)です」
「毎日三食、ずっと食べ続けたとしても、元気で健康でいられる伝統的な和食の型が一汁一菜です」(『一汁一菜でよいという提案』より)。
そして「一汁一菜では、漬物をおかずの最小単位としています。おかずがなくても、汁を具沢山にすればおかずの一品を兼ねる汁物となります。だから、忙しくても、ご飯さえあれば、帰宅後、具沢山の味噌汁を作ることで、10分もしないうちに、温かい食事が食べられるのです」と話す。

さらにこう続けた。「味噌汁には何を入れてもよいのです。野菜室に残った大根も人参の先っぽでも、一枚の椎茸、ピーマンやトマトなどなんでもいい。出汁もいらない。コクが欲しいなら、あまりの肉を入れればいいし、油あげ、ハム、ベーコン、ソーセジ味の出るものを入れればいい。水を加える前に、油で野菜を炒めてもいいし、出来上がりにバターを落としても、イタリアン人のようにオリーブオイルを垂らしても、オニオングラタンスープのようにチーズを入れてもいい。お味噌はなんでも受け入れてくれます」。

「味噌汁は日本人の健康の要として毎日飲もうと思います。ご飯の代わりにパンだってよいのです」「一汁一菜でよいという提案」より

また、「お味噌汁は、一人分でも、二人分でも、きちんと残さず食べ切れる味噌汁が作れます。作り方は、椀にいっぱいの具、椀にいっぱいの水を、鍋に入れる。鍋を火にかけて、煮立てば、味噌を解く。それでお味噌汁の出来上がり」だという。

味噌を湯に溶けば味噌汁である」なのだ。であれば会社でもどこにでも、味噌さえ持参すれば、お茶を入れるよりも手軽に味噌汁がいただける。「酒造りに励む杜氏は、椀に味噌を入れ、鉄瓶で沸かした湯を注いで溶き、手弁当に添えます」(土井さん談)

椀に味噌12~15グラムと削り鰹を一つかみ、熱湯150ccを注いで混ぜるかちゅー湯。「一汁一菜でよいという提案」より

沖縄では、椀に味噌と削り節一つかみを入れ、熱湯を注げば「かちゅー湯(かつお湯)」と沖縄の味噌汁を紹介している。削り節が具になるのだ
  水に煮干しを入れて中火にかけゆっくり煮て、味噌を溶くこともある。「煮干しを入れて、食べればカルシウムが摂れます。煮干しを食べるか食べないかは、ときどきの気分でよいのです。煮干しの味噌汁をベースに、揚げ卵を入れる、また、茹でたもやしを入れることで、具材の味が生きたフレッシュな味噌汁が出来上がります。もやしの味噌汁なんてシャキシャキしておいしいものです。味噌汁は万能です」(土井さん談)