「超前向き人間に見られがちなんですけど、実はバックファイアー型というか、常に最悪の事態を考えて行動する後ろ向き人間なんですよ」と、飯島紗江さん(仮名・46歳)。明るく元気によく喋る。小柄な体にパワーがあふれている。そんな彼女は、Webメディアでバリバリ働きながら、19歳の男の子を育てるシングルマザーだ。

子どもが2歳になる前に元夫と別れてからここまでの人生は、聞いているだけで、ハアハアとこちらの息が上がってしまうほどの起伏に満ちている。

厚生労働省が発表したデータによると、平成27年度の母子世帯の平均就労収入は200万円、平均年間収入(平均世帯人員3.31 人)は 348 万円。父子世帯では平均就労収入は420万円で、平均年間収入(平均世帯人員3.70 人)は 573 万円。母子家庭のうち半数が貧困層にあるという。離婚をして養育費が支払われず、子どもを抱えて就労もままならずに貧困になっている状況もある。養育費の問題や子どものいる就労の問題など、社会が子どものいる家庭を支えられる環境になることも重要だ。そのために暴力などがあっても離婚できないケースや、離婚後に経済的に苦しむケースも生じている。

今回ライターの上條まゆみさんが取材した紗江さんは、どのように乗り越えたのだろうか。
上條まゆみさん連載「子どものいる離婚」これまでの記事はこちら
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「後ろ向きな思考回路」の意味

離婚、母親の認知症、子どもの発達障がい、子どもの不登校。ここ18年間で、紗江さんの身に降りかかったできごとだ。どれか一つだけでも大変なのに、紗江さんはこれらすべてに真正面から立ち向かい、バッタバッタと薙ぎ倒すようにして切り抜けてきた。
何かことが起こったら、嘆いたり落ち込んだりするのではなく、『では、ここからどうしよう?』と考えるんです」
そういう意味での「後ろ向き」な思考回路が、紗江さんを救っている。

「では、ここからどうしよう?」。そう考えざるを得ない機会は、結婚して早々にやってきた。
大学を卒業して入社したweb制作会社で出会った7歳年上の先輩社員と付き合い、妊娠をきっかけに結婚した。25歳でママになった。それなのに、元夫はいきなり離婚したい、と言い出した。

「元夫は働いている女性が好みで、出産後、働いていない私は魅力がないので離婚したい、と言うんです」

紗江さんは、たしかにいったん仕事は辞めていたが、仕事が大好きだったので、いずれ子どもを保育園に入れて働くつもりだった。それなのに。
「ワケわかりませんよね。でも、ワケわからないことを言っている時点で、そんな理解し合えない人とはもう一緒にいてもしょうがないなと思ったので、離婚を受け入れました」

保育園に入れたら仕事をするつもりだったのに、仕事をしないと魅力的でないと言われても…(写真はイメージです)Photo by iStock

結婚して間もないので、財産分与などはなし。公正証書を交わし、養育費は払ってもらうことになった。
あまりにもさっぱりしている。が、この潔さが功を奏した。

「互いに憎み合う前に別れたので、元夫とは結構、いい関係で。同業者ということで仕事のアドバイスをしたりされたり、友だちみたいに付き合っています。もちろん息子も、頻繁に父親と会っていますよ」