「日本の国立公園に行ったことがある?」そう聞かれたら、あなたはどう答えますか。「いいえ、とくにアウトドア好きじゃないので」とか? でも、たいていの人は行ったことがあるんです! 山や海でなくとも、あの名所も旧跡も、国立公園のなか。さあ、次はどの国立公園に行きましょうか。

●お話を伺ったのは…
国連環境計画 生物多様性条約事務局 グローバル・コーディネーター
鈴木渉さん

1994年に環境庁(現・環境省)に入庁。2003年から2年間にわたり研修生としてアメリカ国立公園のボランティアスタッフに。その後は国連大学をはじめ、さまざまな機関で生物多様性に関する業務を担当。2018年より現職。著書に『留学先は国立公園!』『生物多様性と企業経営』などがある。

日本の国立公園について考える

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「国立公園」といえば、グランドキャニオンやヨセミテといったアメリカの国立公園を連想するひとも多いだろう。では日本の国立公園は?

アメリカに見習うべき点はありつつも、日本独自のやり方も模索していくべき。そう語るのは、アメリカの国立公園でボランティアとして活動したときの経験をまとめた『留学先は国立公園!』の著者、鈴木渉さん。

「アメリカの国立公園は“旅行者にとっての聖地”という要素も強いです。世界で初めて国立公園をつくった国としての誇りもある。リタイアしてからキャンピングカーで全米の国立公園を回るのが夢という人も多いですし、長期休暇には都市生活者が国立公園に滞在するスタイルも定番です。国立公園とライフスタイルの距離が日本よりも近い感じがありますね」

一方で日本の場合は、「実はみんな行ったことがある」のではないだろうか。伊勢神宮、出雲大社、日光など、わざわざ国立公園を謳わなくてもブランド力のある場所がたくさんある。でも、そこが国立公園だと認識していない人が多数なのだ。

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「アメリカの国立公園はネットワークがきちんとしています。たとえばヨセミテ国立公園に行けば、他の国立公園の情報もありますし、レンジャーが薦めてくれることも多いです。巨木が好きでレッドウッド国立公園に行ったら、セコイア国立公園の存在を知るというような。すると次はそこの国立公園に行ってみたい、となる。そういうつながりが日本の国立公園は少し弱い気がします」

34ヵ所の“各”国立公園ではなく、大きな国立公園“グループ”としてトータルで魅力を発信していく。ネットワーク化するシステムはアメリカから学べるところも多い。日本の国立公園がブランド化されていけば、実は行っていたことを知らなかったという状況も変わるかもしれない。

アメリカの国立公園システムの総面積は全土の3.4%、本土48州だとわずか1%。この面積には国立公園以外の公園も含まれる。一方、日本は5.8%。意外なことに、国土に対しての面積では大幅に上回っている。ただ、日本では住宅地なども国立公園内に入っているので、管理の仕方も公園計画も違う。

「実は、アメリカの国立公園は施設整備が中心です。ビジターセンター、道路、トイレ。利用者を中心に考えて施設をどんどんつくっていく。一方、日本の自然公園法というのは規制法なんですね。広い範囲にうっすらと規制をかけて、緩やかに開発を抑えるという方法です。これは、どちらかというと消極的ですが、費用対効果の面でも、住民の理解を得るという点でも優れています。言い換えれば、お金がない、強引ではないというのは日本の国立公園のいいところでもあります。つまり地元の人たちと協力関係を築いていかないと成り立ちません。アメリカの国立公園にはそうした地元とのつながりはほとんどありませんから、そういうところを前向きにとらえていけるかだと思うんです」