「公共」と「新しい資本主義」
岸田文雄首相が口にし続けている、「新しい資本主義」の具体的な方向性が、朧げながら見えてきた。

日本経済新聞の報道によると政府は「公益重視の新たな会社形態」の設立に向けた検討に入り、6月に閣議決定する。「短期の利益追求への偏りを修正し、公益を担いながら成長する企業を育てる」といい、「新しい資本主義」の柱の1つになるとしている。
新たな会社形態は、米国などで法整備が進む「パブリック・ベネフィット・コーポレーション」(PBC)がモデルで、定款などでその企業が目指す社会貢献の具体的な内容を明示し、公益と株主の利益のバランスを取りながら経営を行うという。日本での具体的な制度設計は不透明だが、日本には様々な形態の公益法人が存在し、公益財団法人や公益社団法人などには税制上の優遇措置もある。米国のPBCには税制上の恩典はない。
「新しい資本主義実現会議」などの議論では、経済団体から公益法人に課されている厳しい公益支出や収支相償の規制を緩めるべきだといった意見も出ており、「新しい会社形態」が何を目指したものなのか、今ひとつはっきりしない。公益法人は余剰利益を稼ぐことを前提にしておらず、配当のような形で利益を分配することができないためだ。
公益を重視しながら、利益追求や分配もできる形を目指していると言うことなのだろう。SDGsが重視される中で、こうした新しい法人形態が議論されることは良いことだ。