現在、日本の映画業界で監督やプロデューサーなどがキャスティングの権限を盾にハラスメントを行っている実態が明るみになっている。その問題の背景について考えるときにヒントとなるドキュメンタリー映画『キャスティング・ディレクター ハリウッドの顔を変えた女性』が現在公開中だ。ハリウッドで長年活躍したキャスティングの先駆者、マリオン・ドハティを中心に、1950年代から90年代のアメリカの映画史がキャスティングの視点から映し出されている。

先日、ハリウッドで活躍する俳優・尾崎英二郎氏と筆者が本作に関するトークイベントを行った。尾崎氏と話すなかで、日本とアメリカでは映画のキャスティングのあり方に大きな違いがあり、それが昨今の日本の映画界におけるハラスメントにつながっていることを知った。本記事では、トークの内容に加筆・修正を加えたものを前後編でお届けする。

尾崎英二郎氏
尾崎英二郎/俳優
1969年生まれ、神奈川県出身。NHK連続テレビ小説『あぐり』でドラマデビュー。映画『硫黄島からの手紙』出演後の2007年に渡米。出演略歴:マーベル『エージェント・オブ・シールド』、DC『レジェンド・オブ・トゥモロー 』、アマゾン『高い城の男』、CBS『私立探偵マグナム』、Netflix『オルタード・カーボン』、NBC『ヒーローズ』、NHK『ハルとナツ 届かなかった手紙』、大河ドラマ『元禄繚乱』、著作に『思いを現実にする力』(ディスカヴァー)、メールマガジン『夢をつかむプロセス』等がある。
-AD-

日本とアメリカのオーディションはまったく違う

――現在のハリウッドでは、キャスティングを専門に行う「キャスティング・ディレクター」が不可欠な存在になっているそうですね。具体的に、どのような役割を担っているのでしょうか。

尾崎:映画製作のトップにはまずプロデューサーがいて、企画に合う監督や脚本家が決まります。プロデューサーは監督らを含む全てのスタッフの起用から撮影スタジオやロケ地の選定に至るまであらゆる面の統括に追われ、監督は撮影監督と一緒にベストな画づくりにこだわって撮影現場に専念します。

プロデューサーや監督の仕事は多岐に渡ることから、ハリウッドでは初期段階の配役をキャスティング・ディレクターたちに任せて俳優を発掘し、オーディションをして役の候補を絞り込みます。ただし、最終的な配役の決定権はプロデューサーや監督たちにあります。

そもそも、アメリカでは俳優組合に所属している俳優だけでも約14万人いるんです。それほどいる国内俳優をオーディションするのも、海外のロケ先で現地の俳優を探し出すことも、監督やプロデューサーが担当するのは、大きな負担。映画なら1本ですが、ドラマシリーズになると数え切れないほどの俳優の数が必要になりますから。一方、日本では、監督とプロデューサーが直接キャストを選んでいる場合が多いです。