きょうだい関係は繊細だ。遠慮がないからこそ仲がうまくいかないこともある。
にしおかすみこさんはダウン症の姉がいる。母親の「変化」を感じてから、認知症の母と酔っぱらいの父と姉と4人で一緒に暮らしている。
母の認知症のことをはじめ、家族の生活を赤裸々に伝える連載「ポンコツ一家」、9回は2021年の3月、姉の誕生日に姉を皮膚科に連れて行ったときのことをお伝えしている。
頭が剥げてきたことを心配して皮膚科に来たのだが、そこで蘇ったのは幼い日に姉が通っていたスイミングに母と行っていた時の記憶だった。最初にバタフライを覚え、すごいね!と褒められているのを見て誇らしく思っていた幼き日のにしおかさん。
後編では、スイミングの記憶が、伊豆の海で起きたプチ事件のことにつながり……。

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母もスイミングクラブに

映像が少し早送りになる。
姉は順調に平泳ぎ、クロールと習得していく。背泳ぎで苦戦し始めた。仰向けのバランスが難しいのか、何度も水を飲み、壁に頭をぶつけ、ついにはコースロープに吸い寄せられるように漂流した。

Photo by iStock

「見てられない」「他の人の迷惑になる」「少しでも近くで」と、母も入会した。
姉の子供教室と同じ時間帯に隣のコースで大人教室があった。

母のクロールは進んでいる気配がなかった。
牛歩のようなクロールの後ろで、大人の生徒さん達の渋滞が出来た。

母もバタフライに挑戦した。泳いでいるのか、溺れているのか、水しぶきをあげ暴れた。助けようか放っておこうか思案顔の先生が常に横にベタづいていた。

飛び込みスタートにも挑戦し、腹打ちして、それを見た姉が泣いていた。

4、5歳なりの私が思ったのか、今の私が思うのか、私は母を見かねた。

小さな私がアップで映し出される。
見学スペースで、よそのお母さん方に手作りのおにぎりや麦茶を頂きながら、ぬくぬくと水より陸がいいと、言いたげな顔だ。

レッスンを終えた姉が嬉々とした顔で言う。「すみちゃんも泳ごう! 泳げないパパは死んじゃった!」。