2022.05.21
# 就活

「没個性」と叩かれる黒のリクルートスーツ、かつては「流行の最先端」だった…!

多様化し、収れんする就活ファッション

昨年出版され、映画化も予定されている浅倉秋成『六人の嘘つきな大学生』。就活ミステリーともいうべきジャンルを切り拓いた話題作ですが、その登場人物の一人、嶌衣織は次のように描写されています。

嶌さんは小柄で色白、日傘なしではお外は歩かないことにしているんです――と言いそうな上品な雰囲気の女性なのだが、内に秘めたやる気や行動力、それから頭脳の明晰さは小一時間言葉を交わしただけで十分に伝わってきていた。誰もが判で押したように黒いリクルートスーツに黒髪で臨む就職活動だが、面白いもので突貫工事で体裁だけとり繕っている学生というのはなんとなく雰囲気でわかる。スーツ姿が不格好、黒染めが不自然、視線がうつろ、細かい特徴を挙げればきりがないが、とにもかくにも様になっていないのだ。

しかし嶌さんは違った。なんとも自然に、完璧に、就活生なのだ。

これは2010年代初頭の就活生像ですが、この判で押したような就活スタイルは、今シーズンも変わっていません。今の大学生には、黒スーツ以外の選択肢は想像もつかないことでしょう。しかし、「黒リクスーの女子大学生」が当たり前の存在となったのは、さほど昔のことではありません。今回は大学生の就職活動ファッションの来歴をみていきたいと思います。

 

昔は「黒スーツ一択」ではなかった!

就活を描いた映像作品といえば、小津安二郎監督の「大学は出たけれど」(1929年)あたりまで遡ることができますが、ここでは1970年頃からを振り返っておきます。

まず、四男一女の5人きょうだいの葛藤を描いたテレビドラマ「若者たち」の映画化である「若者はゆく――続若者たち」(1969年)では、三男の大学生三郎(山本圭)が就職活動に臨んでいます。採用試験の場は男子学生ばかりで、黒の詰襟学生服とスーツが半々。モノクロ作品なので色まではわかりませんが、スーツは濃紺かグレーのようです。

SPONSORED