国立公園は美しいのが当たり前、なんてとんでもない。その裏には日々、自然や人と向き合う環境省の自然系職員「レンジャー」の活躍があるのです。

国立公園を守り進化させるレンジャー1を読む!
自然や人と向き合い、進化させる…自然系職員「レンジャー」の素顔>>

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動植物と人びとの共生を支える

大山隠岐国立公園 楊木萌さん

楊木萌(やなぎ・もえ)
農学部応用生命科学科の大学生時代に、タイに留学、キングコブラの研究チームでのインターンを経験した。その後、大学院で野生動物研究センターに進学、ウガンダでのフィールドワークを行い、2019年に環境省入省。

大学院生時代、ウガンダでアフリカゾウの研究をしていた楊木萌さん。野生のゾウが地域の畑を荒らし、住人たちが悲しみ憎む姿を目の当たりにして以来、自然の近くに住む人びとが自然の恩恵を受けつつ、その環境を守りたいと思えるためにはどうしたらいいのかを考えてきた。それに寄与する仕事としてレンジャーを選んだのは自然の流れだった。

楊木さんのお気に入りスポット、島根県隠岐のローソク島。

レンジャー3年目の現在、隠岐管理官事務所に勤務する楊木さんは、管轄する4つの島を船で巡視し、登山道や展望台の安全性のチェック、植物の盗掘が行われていないかの確認を行う。許認可の処理などをこなすなか、地域の人向けのイベントや情報発信にも力を入れている。

地域の人たちを対象にしたワークショップ。公園内を歩きながら外来種や固有種の説明をした。

たとえば、外来種をつかった草木染めイベント。隠岐では黄色い花を咲かせる外来種、オオキンケイギクの増加が問題になっている。駆除するだけでは自然環境に関心のない人は楽しめないと、勉強だけではないイベントを考案したのだ。

「地元の人たちが白いTシャツを持ち込み、楽しそうに体験してくれましたね」

ほかにも学校での講演会や自然観察会など、地域とつながり地域の人へ伝える場をつくることに奔走する。2020年に隠岐でウミガメが海洋ゴミに引っかかった状態で発見され、住人たちの協力で保護・放流したことをきっかけに、海岸清掃などを通じて海の環境について考える一日「ビーチクリーンデーin隠岐」を企画した。

全国規模のイベント「スポGOMI甲子園」島根県大会の隠岐での初実施を支援。地元の複数の高校から生徒が参加した。

地元の人に向けた発信に情熱を注ぐのはなぜなのか。自然と人間の営みの場が近いという、日本の国立公園の特性が隠岐においても当てはまるからだ。島々にはいまでも古い石垣が多く残される。土壌が浅い土地において栄養が枯渇しないよう、豆やヒエ、アワ、麦などの栽培地域をローテーションさせていた名残だ。古くから牛の放牧が盛んで、道路で牛が車に通せんぼをすることも日常茶飯事だ。

隠岐は昔から牧畜が盛ん。

暮らしのなかで資源を上手に活用してきた地元の人びとに、「国立公園に指定された」という理由でその利用を制限することは簡単ではない。だからこそ、「国立公園という枠組みのなかで長期的な視点をもって自然を守ることの重要さを知ってもらいたい」と楊木さんは話す。

大山隠岐国立公園に勤めて2年。「人と野生生物が、置かれた環境のなかでともに生きていくにはどうしたらいいのかを今後も考えていきたい。人と自然をつなぐ。どちらの暮らしもよりよいものにするのがレンジャーの任務ですから」