大学の入学式を終え、息子は下宿先へ、西田美恵子さん(仮名・49歳)は借りたばかりのマンションの一室へ、それぞれ帰っていった。美恵子さんにとって、生まれてはじめての一人暮らしがこれから始まる。美恵子さんは、息子が大学進学で家を離れるのを機に、20年以上もの結婚生活に終止符を打った。

結婚して20年以上経つ夫婦の離婚=熟年離婚が増えている。厚生労働省の人口動態統計によると、2020年には19万3251件の離婚数のうち、同居年齢20年以上の夫婦が77960件と、熟年離婚が占める割合は、離婚全体の40%に達した。

結婚して20年以上というと、概ね40〜50代。寿退社、出産退職があたりまえだった世代で、フルタイムで正社員の仕事を続けてきた女性はそう多くない。結婚後は、専業主婦か扶養範囲内でのパートをしているケースがほとんどだ。とりあえず20年以上、経済力をもたずに生きてきた。それが、熟年になって離婚を決意する――事情はさまざまだろうが、やはりその年齢になって丸腰で社会に飛び出すとは、並大抵の決意ではない。美恵子さんには何があったのか。

上條まゆみさん連載「子どものいる離婚」今までの記事はこちら
-AD-

「きっかけは猫なんです」

「実は、きっかけは猫なんです……」と、美恵子さん。結婚してすぐ元夫が猫を飼い始め、合計で20匹にもなってしまった。その子たちを1匹ずつ見送り、最期まで見届けてほっとしたと思ったら、元夫が次の猫を買ってきた。もう猫の世話に縛られる生活は無理! そこから離婚に至ったという。
「ちょうど息子が大学進学で家を出る時期に重なり、これで子育ても卒業。次の猫たちは、元夫と姑で面倒をみてね、そんな気持ちで家を出ました」

Photo by iStock

思えば、元夫に振り回されっぱなしの結婚生活だった。

学生時代に友だちの紹介で知り合った。元夫は中小企業の2代目で、いわゆるお坊ちゃん育ち。性格は俺様タイプで、「俺についてこい」を地で行く人だった。美恵子さんは、そんな元夫が頼もしくて大好きだった。

「就職を考え始めたとき、当時、人気だった客室乗務員もいいなーと思って元夫に言ったら、そんな遠くに行くような仕事はダメだ、その場合は別れる、と言われたので諦めました。人生設計を彼に合わせることに迷いはありませんでしたね」