ジャーナリストの島沢優子さんが伝える、「学校」を舞台にした効率化を阻む現実。小学校についてお伝えした記事に大きな反響があり、小学校にとどまらず、中学校でもデジタル化の遅さ業務量の増加など、教師の前に立ちはだかる情報が寄せられた。
大学や保育園でも、効率化に逆行するような現実への悲鳴をお届けする。

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「やらなくてはいけない仕事」の増加

2022年4月18日公開の『4月1日に新任教師が辞表を…先生たちを疲弊させる「書類の山」の中身と背景』には、さまざまな反響が寄せられた。

私も苦しい」という当事者の声。
「うちの学校は昨年1年間で2人が心の病で休職し1人辞めましたが、年度終わりまで補充がなかった」と同僚の声。いずれも小中学校に勤める先生たちだ。そのなかに、「大学の先生も大変なんです」「保育士も書類の山に悩まされています」といった訴えが見つかった。

まずは、西日本にある国立大学の理工系の学部で教鞭をとる男性、Cさんの話から紹介したい。
「小学校や中学校の先生の勤務時間の長さが過労死ラインだと問題になっていますが、僕ら大学教員もかなり大変なんです。以前は、授業など学生への教育と研究の二つをやっていればよかったのですが、今はやらなくてはいけない仕事が増えるばかりです」

ひとつは「産学連携」だ。大学などの教育・研究機関と企業が連携する取り組みのことで、企業に大学の研究成果を使ってもらうことでロイヤリティ収入を得て、大学の収入を増やすことが求められる。
「大学の運営費交付金が減額されている中、大学側も儲けることを考えなくてはならない。学部によっては、地域への貢献に形を変えることもあります。そういったプロジェクトは教員側がかなり動かなくてはなりません」

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産学連携は経産省からの通達でもあるため、Cさんらは頭をひねって企画を立てる。大学発のベンチャーとして株式会社を設立し、企業と大学の双方が保有する知的財産等の保護と、双方の信頼の維持のためにさまざまな契約を交わさなくてはならない。契約を締結するには、さまざまな書類が必要になる。それらは大学の事務方の協力なしには締結できない。
「(事務職の)彼らは、すぐに前例がないとか言って断ってくるんです。僕らは文科省や経産省など、国を挙げての動きでもあるし、将来的に貢献できればと思ってやっているのに」

そう憤るCさんによると「うちの大学ではそんなことはやっていませんでした」「前例がない」と反対されるという。仕事を増やしたくないのだろうか。Cさんら教員は大学を替わったりするので、メンバーの入れ替わりがあるものの、事務方の職員は50代くらいベテランになると30数年在籍する人もいる。