2022.05.21
# ライフ

「親の介護」は本当に子どもの義務か? 母の介護で疲弊した52歳の長男が「勘違い」してたこと

ある日突然、74歳の母親が倒れ、介護生活に突入してしまった52歳長男の正広さん(仮名=以下同)。認知症と診断された母の介護は日に日に重くなり、ついには離職も考えることになったのは前編記事〈74歳母の急な「介護生活」突入、さらには認知症に…52歳長男を苦しめる「予想外の変化」〉でお伝えした。

しかし、その決断は正解なのか。介護事業を運営する株式会社アテンド代表取締役で、著書『身近な人の介護で「損したくない!」と思ったら読む本』、『介護認定審査会委員が教える「困らない介護の教科書」』などがある河北美紀氏が、エピソードをもとに解説する。

「介護離職」はするべきではない

正広さんは母親の介護と仕事を両立するため、日中はデイサービスの利用、仕事の繁忙時はショートステイ(泊り)などを利用してなんとか生活を続けていました。

しかし夜間は一人で母の介護、休日は同じ内容が繰り返される母の会話に付き合い、加えて時間を選ばずに突然起きる外出の訴えにうんざりする日々。また着替えを嫌がったり、通院を拒否する母の腕をつかんで連れて行こうとして大騒ぎされる度にイライラし、どんどん疲弊していきました。

通院だけは弟さんが都合をつけて連れて行ってくれることもありましたが、デイサービスで体調を崩し、今から自宅に帰らせたいという連絡などは正広さんにかかってくることから、度々会社を早退することも。

この頃から、仕事と介護の両立に限界を感じるように。老人ホームへの入所も検討しましたが、母の年金だけではとても払えるような金額ではなく、このまま在宅介護を続けるしかないと諦めていました。

一方、早くこの生活から解放されたいという気持ちから、仕事を辞めて介護に専念することを考え始めた正広さんは、早期退職を決意。少しでも自分の体が楽になればと長年勤めた会社を辞めてしまったのです。

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介護を抱え込むと誰しも「離職」が頭をよぎりますが、この離職こそが正広さんにとって大きな誤算でした。

さて、厚生労働省は昨年、介護の必要なく日常生活が送れる期間を示す日本人の「健康寿命」は、男性は72.68歳、女性は75.38歳だったと発表しました。一方、生まれてから亡くなるまでの平均寿命は、男性が81.41歳、女性が87.45歳でした。

3年前の調査と比べて男性では0.54歳、女性では0.59歳、健康寿命が伸びた結果だったとはいえ、健康寿命と平均寿命には、男性8.73年、女性12.07歳という大きなひらきがあります。

日本では、寝たきりの期間が欧米諸国と比べてとても長いことから、厚生労働省も様々な施策を行い高齢者の自立を支援、高齢者の要介護度を維持あるいは改善させた介護施設にはインセンティブ(手当)を出すという仕組みも導入されていますが、まだまだ課題が山積み。

親や配偶者に「健康とはいえない期間」がやってきたとき、何かしらのサポートが必要になると認識しておく必要があります。

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