自分の中の純度が高くなっていく

「私が、これほどまでに舞台が大好きになったのは、松たか子さんの主演された『ひばり』(2007年)という舞台を観たことが大きかったと思います。舞台上の松さんを観た時に『なんて生き生きと輝いているんだろう!』と感じて、そのエネルギーに圧倒されました。

そこから、事務所に『舞台がやりたいです』と申し出て、 音楽劇『4×4』の舞台に立たせていただいて。そのご縁で、深沢敦さんとバービーボーイズの杏子さんがプロデュースし出演するURASUJI・lll『寵愛―大陸編―』という舞台では、下北沢のザ・スズナリで、最初のセットの組み立てから最後の解体まで立ち会いました。お稽古では、俳優さんのお芝居が、突然パッと花開くような瞬間がある。演者だけでなくスタッフの皆さんも、みんな作品をよくするために徹底して自分の持ち場を探求していくから、そこにいる自分の純度が高くなっている感じがするんです」

撮影/張溢文
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脚本があって、稽古期間にみんなで一つの作品に向き合い、コンセンサスをとっていく。みんなで意見を出し合うから、ときには議論になることもある。

「目の前の作品がどんどん豊かになっていくその過程を目撃できるのは、舞台をやる醍醐味の一つです。舞台を始めてから、先輩からのアドバイスで特に心に残っているのが、『あなたのちっぽけな脳みそで考えたことなんて、たかが知れている。だからもっと人を頼りなさい』ということ。人の話を聞いて、自分の意見もぶつけて、磨かれていくことがわかる。『生きてるなぁ!』『今日もちょっとだけど進んだなぁ』って実感できるんです(笑)」

舞台が大好きすぎて、やりたかった舞台をスケジュールの都合で断ることになるのが一番悔しい。2年前の取材のときは、「つい最近もそういうことがあって」とため息をついた。    

そこで、ちょうどその頃KAAT神奈川芸術劇場で上演されていた『常陸坊海尊』という舞台が、白石加世子さんにとって、22年前に蜷川さんの演出の舞台でやり残したことをリベンジする場になっていることを伝えた。演出家の長塚圭史さんが、『常陸坊海尊』を上演するという噂を聞きつけて、自分から「出たい!」と売り込みに行ったのだという。白石さんは、その舞台についてのインタビューのとき、「ゴリ押しよ!」と言って笑っていた。「だから、舞台の無念はいつか晴らせると思います」と言うと、倉科さんは、「うわー、その舞台観たい!」と叫んだ。