ドラマに映画に舞台にと活躍している倉科カナさん。現在世田谷パブリックシアターにて上演中の舞台『お勢、断行』では、タイトルロールでもあるお勢を演じている。
純文満帆のように見える倉科さんだが、20代のときは「どういう仕事をしたいのか」「どういう役者になりたいのか」という長いトンネルに入ってしまったこともあるのだという。

インタビューの前編では、2019年12月まだロングヘアだったころに、2020年2月から上演予定だった『お勢、断行』について話を伺った時のことをお伝えした。この作品に没頭することで、仕事について迷っていた「長いトンネル」から抜け出せた気がしたのだという。しかしゲネプロと呼ばれる本番さながらの通し稽古までしたあと、コロナにより初日を目前に全公演中止になってしまった。
インタビュー後編では、長いトンネルから抜け出た後の倉科さんが、コロナを経て「無念を晴らした」道のりを伺う。

2019年12月の倉科さん。現在『お勢、断行』を上演中の世田谷パブリックシアターにてお話を伺った 撮影/岸本彩
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舞台に出演することは“癒し”

2021年出演した2本の舞台での演技が認められ、倉科カナさんは今年2月、第29回読売演劇大賞の優秀女優賞を受賞した。自分の成長について、自覚するのは難しい。でも、今回の受賞によって、昔は持ち得なかった何かを、確実に得られている実感があった。

「もちろん、失ったものもあると思うんですが、この2年間は明確に、何かを掴めた確信がありました。とくに舞台は、私にとっては癒しの場なんです。キャリアのためというより、ただ楽しいからやっていて、自分が好きでやっていることで人に認めてもらえるなんて、こんなに嬉しくて、有難いことはないですよね」

でも、名誉ある賞を受賞したから、長いトンネルを抜けられたのかというと、そうではない。この2年の間に、自分の生きる喜びは、人が輝く瞬間を目撃したときにあると実感できたことが、ありのままの自分を受け入れるきっかけになった。

撮影/張溢文