小熊英二が考える、いま「論文の書き方」が必須のスキルである理由

学問には「型」がある
近年、「文系」の学問でも共通の型式で論文を書くことが求められるようにりました。従来の「論文入門」とは異なり、そもそも論文とは何かから話を始め、学問の「型」を実践的に理解するーー。社会学者・小熊英二氏による「論文入門」の決定版『基礎からわかる論文の書き方』が5月18日(水)に発売されます。本書から、本のエッセンスをお伝えする「はじめに」の一部公開します。

「論文とは何か」が大事な理由

世の中には、「論文の書き方」についての本が数多くあります。

けれども意外に、論文とは何を目的としているのか、なぜ特定の書き方をしなければいけないのか、理由を述べて説明してある本は、それほど多くありません。

どうしてか。それは、「論文とは何か」を理解するよりも、「どう書くのか」を知りたがる人が多いからではないかと思います。

しかし、「契約書とは何か」を理解せずに、契約書は書けません。マニュアルを探してきて、型式を真似ることはできるかもしれない。しかしそれでは、なぜ特定の書き方をしているのか理解できず、「契約書まがい」の文書を作ってしまうでしょう。

これは論文も同じです。「論文とは何か」を理解しないで、論文は書けません。

ですからこの本では、「どう書くのか」より先に、「論文とは何か」を説明します。そうすることで、「どう書くのか」「なぜそういう書き方をするのか」についても、よりよく理解できるでしょう。

 

「論文の書き方」は社会人にも有用

この本で説明していることは、企業などで報告書を書こうという人にも、有用だと思います。なぜなら「論文を書く」ということは、自分の考えを根拠と論理をもって説明し、他人を説得することにほかならないからです。

たとえば「この商品はどうしてすばらしいのか」を説くには、「すばらしいです」と連呼するだけでは不足です。「これまでの商品とどこが違うのか」「どういう利点があるのか」を明確に伝えなくてはなりません。

そのためには、伝えたい主張を明確に設定することが大切です。そして、確かな根拠を集めることが必要です。さらに、集めた根拠を分析し、論理的に配置して、自分の主張が正しいことを示さなくてはなりません。これは、この本が説明している「論文の書き方」と、ほとんど同じだといってよいでしょう。

またこの本に書いてあることは、作文や感想文とは違う「論文」がどういうものか理解したい、という高校生にも有益かもしれません。もちろん大学生や、これから大学院を受験しようという人にとっては、欠かすことのできない基礎知識だと思います。

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