和食を重要な日本文化の一つと考え、後世に伝え継ぐことをライフワークにする『菊乃井』主人・村田吉弘さん。その技と意思を受け継ぐ弟子の『てのしま』店主・林亮平さん。和食のこころとその未来とは。

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『菊乃井』村田吉弘さんに聞く「世界はなぜ和食を求めているのですか?」

お話:村田吉弘さん
『菊乃井』三代目主人。日本料理アカデミー理事長はじめ数々の要職を歴任、「和食」のユネスコ無形文化遺産登録に尽力する。2012年「現代の名工」、2013年「京都文化功労賞」ほか受賞多数。2018年「黄綬褒章」を受章。同年、「文化功労者」に選出される。

聞き手:林亮平さん
『てのしま』店主。香川県丸亀市生まれ岡山県玉野市育ち。大学卒業後『菊乃井』入社。2015年『赤坂 菊乃井』渉外料理長就任。師匠:村田吉弘氏と共に世界17カ国で和食普及のためのイベントに携わる。日本料理アカデミー正会員。

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本質的な貧しさがここ数年で進んでると思う

林さん(以下、敬称略) 大将は革新的なことも実はいろいろされていて今は当たり前になっている土鍋で炊いた炊きたてのご飯を出すのも大将が始めたし。

村田さん(以下、敬称略) フランス料理では自分のとこで焼いた焼きたてのパンが出てくるでしょ。料理屋でも炊きたてのご飯を出したらええなあと。

琵琶湖の疎水を写したという庭は10年前に新しく造り変えられた。手入れの行き届いた庭は季節だけでなく時間帯でも違った表情を見せ楽しませてくれる。

 フルーツ以外のデザートを出したのも大将が初めてですね。

村田 フランスではね「肉は身体のために、デザートは夢のために」いうてね、デザート食べながら長い時間喋ってはるでしょう。料理屋でもそういうシチュエーションを作りたいなと思て。シャーベットから始めて、牛乳のアイスクリーム作って恐る恐る出して、懐石やのに何でアイスクリームなんか出すねん! て言われたらへっこめよう思てた(笑)。でも喜ばれた。それで、さすがにチョコレートはあかんやろと思たけれども、カカオ餅作ってみたら美味しいて言うてくれはった。杏仁豆腐も杏の仁を使ってちゃんとしたのを作りました。でも、コンビニの杏仁豆腐もけっこう美味しいから、うちはまた違うこと考えなあかんな(笑)。僕はいっつもびびってんねん。でも、びびることはすごく大事なことやと思てる。びびると勉強せなあかんなと思うし。足りないところがいっぱいあると思てないとなかなか前には進めない。そやから努力もせんようになる。

 大将はコンビニもめっちゃチェックされてるので驚きます。大将は最近、給食に力を入れておられますね。それも和食を世界の文化にすることにつながるのでしょうか。

村田 僕は日本の本質的な貧しさがここ数年で進んでると感じてます。例えば、昔は季節で茶碗もかえてたけど、めんどくさいからせんようになったでしょう。季節を愛でるとか、ちょっとでも自分とこの生活に潤いを感じるようなことをやらんようになったら文化が衰退します。そうならないために必要なのは食育なんです。食育をちゃんとせんと文化が崩壊すると思う。僕は和食を世界の料理にするために戦略的にいろいろやってきたけど、このままやと日本はこれから大変な状況になるね。50年後には人口が8千万人になって、そのときには60歳以上が人口の45%、働き出す前が30%、あとの25%が75%を食べさす国になります。今みたいな飽食を続けてたら自給率は19%になって子どもが飢える国になってしまう。そうならないように自給率を上げていくためには和食を世界の料理にせないかんというのが日本料理アカデミーで話し合った結論です。