ニューヨークやヨーロッパの都市の最新スポットやパーティ、高級ホテルにいるアンナ・デルヴェイのインスタの写真には、独特の雰囲気がある。どこにいてもアンナは無愛想で、自分の状況を楽しんでいるようにはまるで見えない。周囲にはそれが超然とした態度に見えたのかもしれない。

しかし、アンナの正体が明らかになると、態度の悪さや冷ややかさの神秘性は薄れ、人々の評価も変わる。彼女は外見的にも、人間としても魅力的ではなかったと今では誰もが口を揃えて言う。アンナにまつわる魔法の全ては、6千万ユーロの信託財産という後ろ盾があって成り立つものだった。そしてニュースやドラマを見た人が知っている通り、それは存在しなかったのである。

アンナ・デルヴェイことアンナ・ソローキンはドイツに住むロシア移民の娘だった。運送業を立ち上げた父親は苦労人だ。ヨーロッパにとどまっていたら、彼女には自分が好きな夢を描くチャンスもなかったかもしれない。社会的な階層の移動はどんどん困難になっている。でも、ニューヨークならば、彼女にはアイデンティティを刷新する機会があった。実体ではなく「イメージ」で見てもらえた

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“本物”になりたかったアンナ

アンナ・デルヴェイが自分の帝国を築こうとしたチャーチ・ミッション・ハウスは由緒正しい古いビルディングだ。中世アムステルダムの市庁舎をイメージしたという花崗岩とライムストーンの美しい建築物である。建てられたのは1894年で、南北戦争が終わってアメリカの都市部が経済的に豊かになったギルディッド・エイジ(金ピカ時代、金メッキ時代とも)の頃である。

チャーチ・ミッション・ハウス/By ajay_suresh - Fotografiska New York, CC BY 2.0

このビルディングは地理と歴史においてニューヨークのオールド・マネー(代々続くお金持ち)と結びついている。デルヴェイがこのビルディングにこだわった理由も、きっとそこにあった。彼女はただのイット・ガールでも、偽りの裕福な女性でもなく、アメリカにおいて本物の上流階級になりたかったのだ。