2010年代に現れた、「Fake it until make it」な若者たち

今年、2010年代を舞台にしたアメリカの実話ベースのドラマに、この時代ならではの主役たちがずらりと顔をそろえた。カリスマ性と派手な行動/演出で事業を立ち上げ、最後には詐欺まがいの行為で逮捕されたり、自身の会社を追われた者たちだ。アップルTVの『WeCrushed〜スタートアップ狂奏曲〜』でジャレット・レトが演じるのは、シェアオフィス事業WeWorkの創始者で、事業不振にもかかわらず大型出資を受けてグローバル展開しようとした矢先、資金流出などが発覚して退任に追い込まれたアダム・ニューマン。日本ではディズニー+で見られる『ドロップアウト シリコンバレーを騙した女』の題材は、ベンチャー企業セラノスの創業者で、完成していない血液の検査機器を使って巨万の富を得たエリザベス・ホームズ。
そして架空の6千万ユーロ(約82億6000万円)の信託財産をもとに自分の財団を作るとうそぶき、ニューヨークのイット・ガールとなったアンナ・デルヴェイの転落を描くのが、Netflixの『令嬢アンナの真実』だ。

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彼らの共通点とは何だろう? 成功者としての自分の姿ははっきりと描けて、そうなったら何をしたいかというビジョンはあるが、そこに至るまでの道のりについては無頓着なところだ。英語には「Fake it until make it」という決まり文句がある。なりたい自分像があるのなら、既に自分がそうであるように振る舞えという意味で、そうしている内に本当に目標の姿に近づけるという。彼らはこの決まり文句そのままに、内実が伴わないのに“成功者であるふり”をして、本物になる前にメッキが剥げたのである。

しかし、多くの社員を解雇し、路頭に迷わせたアダム・ニューマンや、偽の検査で人々の健康に深刻な害を及ぼす直前だったエリザベス・ホームズと比べると、パークアベニューの由緒あるビルディングにクラブタイプの大型ギャラリーを設営しようとして、融資先や富裕層の人々を騙したアンナ・デルヴェイの罪は小さく、そのビジョンはどこか現実離れしていて、夢がある。しかもその夢と彼女の犯罪は、ニューヨークという街でなければ成り立たないタイプのものだった。