ジャーナリストの島沢優子さんの著書『スポーツ毒親 暴力・性虐待になぜわが子を差し出すのか』(文藝春秋)には、スポーツ指導の場で子どもが暴力や性虐待にさらされているにも関わらず、それを良かれとする親の姿が多く描かれている。
しかしそれだけではない。親同士が嫌がらせをするような状況すらあるという。その例が少年野球やサッカーなどの「当番問題」。できない親に嫌がらせしたり、当番できない親の子どもが試合に出られないという現実もあるというのだ。

本書の6章よりその実例を抜粋紹介する前編では、萌さんという中学生の野球クラブに子どもが所属している女性が当番問題で苦しむ状況をお伝えした。萌さんの働きかけにより、コーチが「当番制をやめよう」と決めたにも関わらず、まとめ役の母親から「継続しましょう」と一斉ラインが送られてきたのだという。後編では、涼子さんという小学校6年生の息子のいる女性の実体験を抜粋にてご紹介する。

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片道2時間、車当番の家庭は丸一日拘束

同じ関東在住で小学6年生の息子が少年野球に打ち込む涼子は、「車当番」のことでいま頭が痛い。

月に3回、土日のどちらかは大会参加や練習試合をするため遠征に出る。遠征と言っても、ほとんどが車で片道2時間以内のところばかりだ。ガソリン代は後日精算して支給されるものの、車当番になった家庭は休日に丸一日拘束される。運転するのは父親が多く、平日の仕事で疲れ切った体で早朝5時、6時から運転することもあり、負担は大きい。過去には居眠りをしてガードレールにぶつかるという自損事故を起こしたケースもあった。

車を持っていない家もあるが…Photo by iStock

「皆さん、本音を言えば車当番はしたくない。車の中も泥で汚されたりしますし。でも、本当に勘弁してくれよと思っている方は、子どもが試合に出ない親御さんだと思います」と涼子。わが子がレギュラーでその日の数試合すべて出場するならまだしも、代打さえ指名されずウオーミングアップだけやって帰ってくる子もいる。それが続くと、親のほうも辛いだろう。

それでも、いつも車当番を請け負う家の親からは「不平等だ」との声が上がる。またしても、土日に仕事がある親や、小さいきょうだいがいる人や、シングルマザーが標的になる。車がない人は表立っては言われないものの、肩身は狭い。