体罰動画でコーチらの暴力を生徒が訴えた「秀岳館問題」が、昨今注目されている。スポーツ指導の問題といえば、指導者による子どもへの精神的・肉体的暴力が真っ先に挙げられる。ところが、問題の解決を遅らせている要因のひとつが、「親」の存在だ。

わが子への暴力に対し、なぜ親たちは沈黙してしまうのか。スポーツの指導現場を長く取材するジャーナリストの島沢優子さんによる『スポーツ毒親 暴力・性虐待になぜわが子を差し出すのか』(文藝春秋)では、親たちの心理や背景とともに、子どもが健やかに成長するために必要なことが解き明かされている。

本書の第6章で描かれている、「少年野球当番問題」。親同士の嫌がらせが続いた結果、子どもが野球を続けられなくなる状況すらあるという。
本書より抜粋の上、前後編にてお届けする。

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当番に来られない人をわざとリーダーに

野球の競技人口減少の一因といわれる親の「当番問題」。グラウンドで練習の見守り、遠方での試合の車出し等々、少年野球の活動には親の後方支援が欠かせない。

「保護者同士のトラブルが多いのも事実です。特に母親の当番問題は根深いと感じています」

そう話すのは、現在関東地方で中学生の野球クラブに息子が所属する萌だ。

グラウンドによく訪れる母親たちは「自分達ばかり大変な思いをしているのはおかしい」と不平等を訴え、あまり来ない母たちは「下の弟や妹がいて来られない」「共働きだと週末出勤もある。当番を一方的に決められても困る」と主張する。

親同士の確執があるというのに、保護者代表の母親は「みんな平等に仕事しなきゃダメでしょう」と半ば強引に当番決めをしてしまう。そのことで、当番する組と、できない組の溝はますます深まるばかりだ。

そのうえ、保護者代表はグラウンドに来られない親に嫌がらせをする。来られない人に、個人的に連絡して仕事を増やしたり、係のリーダーにする。土日の通常当番の他に平日当番にも入らせたりといった具合だ。

子どもたちを応援したい気持ちで、練習を見に行く。それは素晴らしいことだが、家庭の事情や仕事がある人も…Photo by iStock