日本各地に点在する「国立公園」は美しいのが当たり前、なんてとんでもない。その裏には日々、自然や人と向き合う環境省の自然系職員「レンジャー」の活躍があるのです。

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レンジャーが頼りにする経験豊かな先輩の姿

環境省自然環境局総務課 調査官 長田啓さん

長田啓(おさだ・けい)
工学を学び、自然系技官として1995年に環境庁(当時)に入庁。環境省本省と、北海道から沖縄まで日本各地に赴任し、野生動物の保護対策や国立公園の計画管理、動物愛護政策などに携わり、2021年より現職。

東京は霞が関、環境省本省にデスクをおく長田啓さんは、1995年の入省以来、十和田八幡平国立公園、沖縄、佐渡など各地にレンジャーとして赴任してきた。現在は採用や人事などの立場で、全国で活躍するレンジャーを束ねケアする立場にある。

初めての赴任地、十和田八幡平国立公園を流れる奥入瀬渓流。

国家公務員であるレンジャーは、各地の国立公園の自然保護官事務所などに赴任すると、数年はその土地に住み、動植物の調査・保護、登山道などの施設の計画・整備、開発行為の規制などの業務を行う。さらに、利用者への情報発信や自然を利用するためのルールづくりなど、任務は多岐にわたる。

長田さんに、どんな人がレンジャーに向いているのか尋ねた。

「自然に強い関心があることは大前提で、同じくらい人間に対しても関心があり、協力して何かをつくり上げることにやりがいを感じられる人ですね」

同公園内の八甲田山にある毛無岱湿原。

長田さんが北海道に赴任していたころ、知床国立公園の美しい湖をめぐる遊歩道にたびたびヒグマが出没し、その都度遊歩道を閉鎖しなければならないことが問題になった。観光客にいつでも美しい湖を散策してもらえるようにしたい―。長田さんは、地元の観光協会やガイド、役場などと何度も協議を重ね、「知床五湖 二つの歩き方」という新たな観光ルールを生み出した。観光客は電気柵で囲われた高架歩道を自由に歩くか、ヒグマに対する知識を身につけた地元ガイドとともに散索するか、どちらかを選ぶ。安全性を担保しつつ、さまざまなニーズに応えられるようにしたのだ。

「地域の方々とものを決めるとき、考えが食い違うことが必ずあります。しかし長期的な視点に立てば、たいてい目指したいことは一致する。専門的な知識や他の地域での経験も活かしつつ、目の前の人と真摯に向き合って、ともに魅力的な地域をつくっていくのがレンジャーなんです」

同公園内の冬は雪深く、閉鎖された車道はスキーをはいて移動する。

初めての赴任地は十和田八幡平国立公園だった。

「奥入瀬渓流のほとりに住んでいたから、朝は鳥のさえずりで目が覚める。文字どおり、日々刻々と移ろいゆく渓流の自然を楽しみながら通勤したものです」

本省で管理職を務めるいまも、現場で汗水流した経験を原点として心に留めていると長田さんは言う。

「地元の人たちが連綿と引き継いできた自然を、この先も守れるように、長期的な視点をもってサポートするのがレンジャー。地域の人びとの暮らしに輝きを与え、訪れる人の記憶に感動を残すのが使命です」