210億ドル支払ってでも、イーロン・マスクがTwitter買収にこだわる理由

「表現の自由」が意味しているもの

この20年で最大の企業買収

Money Talks.――

アメリカの場合、最後にものをいうのは、やっぱりカネなんだな、と思わせる出来事が4月に起こった。

イーロン・マスクによるTwitterの買収のことだ。

2022年4月25日、Twitterのボードメンバーは、マスクによる総額440億ドルの買収に応じることを発表した。4月14日にマスクが買収の意志を公表してから10日ほどでの決着だった。この間、Twitter側は防衛策としてポイズンピルを発表するなど、抵抗の意志をいっとき示したものの、結局は買収に応じることで落ち着いた。

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今回の買収は、規模としてはこの20年余りで最大のものといわれる。それゆえ、マスクは買収資金をどうやって調達するのか、本当に調達できるのか、と疑問視する声が、買収計画の公表直後から上がっていた。

最終的に買収総額の約半分にあたる210億ドルについては、マスクの個人資産から捻出されることになった。残りの買収資金は、当初から名前が上がっていたモルガン・スタンレーを中心に、複数の金融機関からの融資によって充当される。

(後日、5月に入ってからマスクは、借入金を減らすため、シリコンバレーの投資サークルを中心に70億ドルを確保したことを明らかにした。出資者には、Oracle創業者のラリー・エリソン(10億ドル)、VC大手のSequoia Capital(7億ドル)、マーク・アンドリーセン率いる新興VCのAndreessen Horowitz(4億ドル)、暗号通貨取引所大手のBinance(5億ドル)、ソブリン・ウエルス・ファンドのQatar Holding(3億 7500万ドル)など、19の投資者/団体が名を連ねる。マスクの手腕を信用する者たちからの出資であり、いかにもシリコンバレーな顔ぶれである。)

今や世界一の長者となったマスクの資産は、基本的にTesla株の高騰によって支えられている。そのため、Teslaの業績に陰りが見られれば、今回の買収が見送られる可能性が全くないわけでもないのだが、裏返せば、そのような異変が起こらない限りこのまま買収は実行される。

首尾よく買収が完了した後は、マスクの意向に沿って、Twitter社は上場を廃止し、非公開企業として、マスクの望む形のTwitterへと作り変えられる見通しだ。したがって、Twitterの社員の間ではすでにレイオフを懸念する動きも見られる。

ところで、冒頭で「カネがものをいう」という言葉に触れたのは、アメリカ以外の国ならば、たとえばヨーロッパの民主国家であれば、Twitterのようなメディア企業に買収の話が出てきた場合、政治家や経済界の重鎮が乗り出してきて、待ったをかけるような事態が生じてもおかしくはないためだ。政治の介入である。

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