独裁者はこうして民衆を「洗脳」する…プーチンが仕掛ける支配体制の「衝撃中身」
いまだに国内の支持率が高い理由1989年のベルリンの壁崩壊で暴徒と化した市民の怒りはプーチンが所属していたKGBにも向けられた。プーチンはクレムリンに助けを求めたが赤軍幹部たちは「何もできない」と答えるのみだったという。まさに祖国ソビエト連邦も崩壊の時を迎えようとしていたのである。
信じてきた国家が崩れ去る恐怖は、プーチンの深層心理に深く刻まれている。だからこそ、ロシアという国家を統治する自分自身が絶対に死なない仕組みを、あらゆる手段を使って作り上げた。
そんな独裁者の「自己保存システム」について前編記事『プーチンの側近「暗殺計画」のヤバすぎる中身…こうして人がどんどん殺されていく』でお伝えした。この異常な事態を国民はどう思っているのだろうか…? 引き続き専門家が指摘する。
洗脳された民衆たち
では、民衆はどうだろうか。権力者の異常さに気づいた民衆が、政権を倒すのではないか。
だが、そううまくはいかないと東京大学名誉教授の本村凌二氏は語る。
「民衆は、生活が豊かになるという『アメ』さえ与えられれば独裁者を支持します。紀元前6世紀頃に古代ギリシャ・アテネで僭主制を敷いたペイシストラトスは、『暴徒に襲われた』と被害者を装って軍隊を動かし、不法な手段で権力の座に就きました。
側近を自分の親族で固める独裁でしたが、民衆の満足度は高く、政権は安定しました。農民保護政策や銀山の開発によって経済を発展させたからです」

生活が豊かになる限り、民衆は多少の不正には目を瞑る。それは2500年以上前から変わらない。
「『中東の狂犬』こと、リビアのカダフィ(1942〜2011)も国民の生活を向上させたことで知られています。石油を海外に売り、リビアの一人あたりGDPは1万2020ドルに高まりました('10年時点、中東・北アフリカの平均は3597ドル)。さらに医療費をゼロにしたり、大幅な減税を実施したりと、国民は豊かな暮らしを享受できました」(国際政治学者・六辻彰二氏)
だが、カネの切れ目は縁の切れ目だった。国連に経済制裁を敷かれたリビアは大口顧客を失った。結果、民主化勢力やイスラム過激派が反カダフィで団結し、'11年に政権は崩壊した。