2022.05.14

どんなに国内で「再分配」をやっても、「日本の貧しさ」はいっこうに変わらない根本の理由

週刊現代 プロフィール

国家が所得を稼ぐ方法は輸出や輸入など海外との貿易だ。このとき、海外に輸出して稼ぐ価格があまり変化していないと仮定した場合、エネルギー価格の高騰や、その国の通貨の相対的な価値低下によって、海外から調達するコストが上昇すると、この家計の富は海外に流出することになる。

このとき、物価の変動を考慮した実質の数値では、「実質国内総所得=実質国内総生産+α」となり、国内総所得と国内総生産には「α」の分だけ誤差が発生する。このαを「交易利得」という。

これがマイナスの値になるとき「交易損失が発生している」と表現する。この交易損失は、輸出入の価格が変化することで発生する「国家の貿易上の損失」であり、国家の富が流出していると捉えることができる。

 

では、ここで実際の日本の交易利得を見てみよう。3月に発表された内閣府のデータ('21年10−12月期の四半期別GDP・2次速報値)によると、'21年10−12月期で約9・5兆円もの交易損失が発生している。

ちょうど1年前の'20年10−12月期は約4・4兆円の交易利得があったので、最近の原油価格の高騰や円安によって、実質国内総所得が目減りし、日本経済が大きな打撃を被っていることがわかる。

1ドル110円台半ばだった為替相場は、'22年5月には、ついに130円を突破している。これに比例して、交易損失が広がっていることは想像に難くない。

現在、政府はガソリン1リットルあたり最大35円の補助金を出すなど、原油価格高騰の抑制に躍起になっているが、それはあくまで「国内での再分配」に過ぎない。世界的な原油高と円安という根本的な問題の解決なくして、この9・5兆円の「国家規模での資産流出」は取り戻せない。

だが、日銀の黒田東彦総裁は「大規模な金融緩和を粘り強く続ける」と高らかに宣言し、円安に拍車をかけた。残念ながら、資産の流出は、ますます進みそうだ。

『週刊現代』2022年5月14・21日号より

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