2022.05.26
# 日本経済 # デフレ

日本は、世界的に見れば、まだまだ大幅「物価安」!

「低物価」ニッポンを分析
この20年間、物価が上がらなかったのは、OECD諸国の中で日本だけ!
値上がりしたものもあるが、それは「悪い物価上昇」。「良い物価上昇」を果たせている海外とは何が違うのか?
第一生命経済研究所 首席エコノミスト・永濱利廣氏の新刊『日本病
——なぜ給料と物価は安いままなのか』から、「低物価」ニッポンの現状を分析した部分をご紹介します。

第1回記事:なぜ日本の国力は、これほど低下してしまったのか?
第2回記事:なぜ日本の給与は上がらないのか?〜「低所得」ニッポンを分析〜

日本の物価上昇率を海外と比較してみると......

ここに、衝撃的なデータがあります(図表3-1)。

2000年から2020年にかけて、20年間の物価上昇率(インフレ率)をOECD加盟諸国で比較したものです。軒並み上がるなか、なんと日本だけが下がっています(マイナス0.3%)。日本ほどではありませんが、スイスもプラス0.3%と、他の国に比べると際立って上昇率が低くなっています。

これは、通貨価値と物価に相関関係があることによります。

日本とスイスは、為替市場においてはともに「逃避通貨国」と認識されてきました。日本円とスイスフランは、マーケットでリスク回避の動きがあるときに買われやすい通貨だったのです。いわゆる「リスク回避の円買い」と言われるものです。

物価が上がるというのは、裏を返せばお金の価値が下がるということです。つまり、物価が上がりやすいということは、その国の通貨価値が下がりやすいことを意味します。

逆に、通貨価値が下がりにくい国というのは、物価が上がりにくいということになります。ゆえに、インフレ率の低い日本円やスイスフランは、リスク回避の通貨となってきました。

なので、インフレ率が低めで安定していること自体は必ずしも悪いことではありません。残念なのは、スイス経済は「高水準」で安定しているのに、日本経済は「低水準」で安定しているところです。日本が物価も給料も安いままなのに対して、スイスは物価も給料も高値安定なのです(ちなみにコロナ・ショックやロシアによるウクライナ侵攻によるモノ不足によって、現在は日本・スイスともにインフレ率は上がっています)。

適切なインフレ率は2%

図表3-1を見ると、各国の物価上昇率にはかなり差がありますが、一般的に先進国のインフレ率は、消費者物価指数の前年比プラス2%程度が経済の安定にとって望ましいとされています。緩やかに物価が上がることで、お金が回るようになり、企業も家庭も国も豊かになります。

ただ日本ではなかなかインフレ目標である2%を達成できないので、目標を1%に下げてもいいのではないかという意見をときどき耳にします。

しかし、各国が2%を目指しているということは、各国が「通貨の価値を年に2%ずつ下げる」ことを目標にしていると言い換えることができます。そのなかで日本だけインフレ率1%を掲げることは、「日本は年に1%ずつしか通貨の価値を下げないよう努めます」と宣言しているのと同じです。そうなれば当然、他国より円の価値が下がりにくくなるという見通しによって円が買われやすくなり、円高に傾くことが予想されます。

日本の現状では、需要不足解消のために適度な円安のほうが望ましいですから、各国に合わせて2%目標を掲げ続けるほうが合理的なのです。